みすず書房

ブック・ウォーズ 電子書籍あり

デジタル革命と本の未来

BOOK WARS

The Digital Revolution in Publishing (1st Edition)

判型 四六判
頁数 704頁
定価 5,940円 (本体:5,400円)
ISBN 978-4-622-09749-5
Cコード C0033
発行日 2025年1月23日
電子書籍配信開始日 2025年1月27日
オンラインで購入
電子書籍を購入 *価格は各電子書店でご確認ください
ブック・ウォーズ

〈アンディ・ウィアーは自分の幸運に目を疑った。ずっと作家になりたかったのだ。9歳のとき……以来ずっと〉(本書より)。
ベストセラー小説『火星の人』の作者ウィアーに幸運をもたらしたのは、デジタル革命だ。彼は、ウェブサイトに作品をアップロードしたり、Kindle版を自ら出版したりしたことで多くの読者を得た。グーテンベルク以来、出版社という門番に認められない限り、原稿が本として広く読まれるチャンスはほとんどなかったが、今や、作品を読んでもらうために、出版社や実店舗書店を通す必要は必ずしもなくなっている。
社会学者にして、独立系出版社Polityの経営にも携わる著者は、デジタル革命が書籍サプライチェーンを破壊して創りかえた歴史を、膨大な統計資料、約180件の出版・テック業界関係者インタビューから論じる。
本の全ジャンルで印刷書籍が電子書籍に追い出されることはなかった。従来型書籍産業は、GoogleやAmazonといった巨人たちと「ブック・ウォーズ」を闘う羽目になった一方で、マーケティング新技術やクラウドファンディング型・サブスクリプション型出版モデルを手にしてもいる。オーディオブックという新形式も生まれた。さらに、小説をアップロードできるソーシャルメディアで、作者と読者が直接交歓して新たな作品が創られるようにもなっている。
本の未来を憂う、すべての書籍産業関係者、読者のための新たなる基本書。

目次

まえがき
序論

第1章 電子書籍のためらいがちな出足
電子書籍の起源と出現/電子書籍の売上パターンを細分化──水面下の状況を調べる/なぜばらつきがあるのか?/形態(フォーム)形式(フォーマット)/アメリカ以外の状況

第2章 本の再発明
デジタルショートの栄枯盛衰/大胆な試み/アプリケーションとしての電子書籍/本をアプリケーションとして再発明する/偽りの夜明け

第3章 既刊本をめぐる戦い
先制の一撃/名作をよみがえらせる/既刊本だけの電子書籍出版の限界

第4章 グーグルの乱
検索エンジン戦争/つきそうでつかない決着/スニペットの大きさ/グーグルブックスはどこへ向かうのか?

第5章 上り調子のアマゾン
アマゾンの台頭/司法省が参戦/アシェットとの対立/市場のパワー/心休まらない休戦

第6章 可視性への闘い
実店舗世界の可視性/メディアを介した可視性の変貌/アルゴリズムの勝利/読者へリーチする/出版界のスイス/ディスカウントによる可視性/デジタル時代の可視性

第7章 自費出版の大爆発
バニティプレスから独立系出版へ/電子書籍時代の自費出版業/あなただけの美しい本/自費出版というフィールドに参入したアマゾン/出版サービスという連続体(スペクトラム)/隠れた大陸/独立系の電子書籍の出版数を推定する/パラレルな世界と複数の経路

第8章 本のクラウドファンディング
クラウドファンディングの隆盛/直販型出版としてのクラウドファンディング/読者によるキュレーション/メインストリームの引力

第9章 ブックフリックス
スクリブドの賭け/オイスターの栄枯盛衰/キンドルアンリミテッドがシーンに登場/本のエコシステムにおけるサブスクリプション

第10章 新たな声の文化(オラリティ)
オーディオブックの発展/オーディブルの誕生/オーディオブックがルーティンに/オーディオブックのサプライチェーン/オーディオブックの制作/ページ上の演技/オーディオ・ビジュアル・コンテンツに埋もれる本

第11章 ソーシャルメディアでのストーリーテリング
物語のためのユーチューブを構築/無料で物語を共有する/物語からスタジオへ/物語から本へ

第12章 オールドメディアとニューメディア
クリエイティブ業界のデジタルディスラプション/データパワー/コンテンツプロセスの育成、文化の植民地化/デジタル時代の出版/読者のことを本気で考える/デジタル時代の本

結論──流動する世界

付録1 米大手商業出版社の売上データ
付録2 調査手法についてのメモ
原注
索引

「紙〈対〉デジタル」の図式をこえて

編集者からひとこと(WEBみすずサイト「新刊紹介」)

書評情報

永江朗
(ライター)
「発見される個性、情報のブラックホール」
毎日新聞 2025年3月22日
記者が選ぶ
読売新聞 2025年3月23日
酒井正
(法政大学教授・労働経済学)
「生き残る紙の書籍という逆説」
朝⽇新聞 2025年4月19日