みすず書房

グレン・グールド著作集

THE GLENN GOULD READER

判型 A5判
頁数 712頁
定価 7,920円 (本体:7,200円)
ISBN 978-4-622-09770-9
Cコード C0073
発行日 2025年4月10日
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グレン・グールド著作集

独創的ピアニストが遺した言葉を「音楽」「パフォーマンス」「メディア」などに集大成。未来に読み継がれる35年ぶり新訳決定版。

「グレン・グールドが日本を訪れることはなかった。三十一歳で演奏会活動をやめていたし、二十代なかば以降は飛行機に乗ることも拒んでいたからだ。そもそも六十年前の世界は今よりはるかに大きく感じられていた。しかし、グレンが名ピアニストであるばかりか、第一級の音楽思想家であることを早くから認め、あの見事な演奏に劣らず、その思想にも考察する価値を見出していた国は、日本だったのである。
本書『グレン・グールド著作集』(The Glenn Gould Reader)は、一九八二年十月四日にグレンが没してから数ヶ月のうちにまとめられた。私たち友人や関係者がひどい衝撃に見舞われていた時期だが、この私たちは、グレンの大胆さ、独創性、知性、そして喜びを捉えた本を出したいと考えた。彼の言葉が生き続け、その演奏同様に、未来の世代に語りかけてくれることが大切だと思えたからだ。
グールドが生きていれば、九十歳を越えている。彼が没してから四十年以上が過ぎたが、これまでに起こった大きな変化の数々を彼はどのように受けとめたであろうか――。いずれにせよ、彼の音楽と思想は今も生きている。そして私たちを魅了し続けるのだ。」(編者ティム・ペイジ)

目次

日本の読者へ(ティム・ペイジ)
謝辞
はじめに(ティム・ペイジ)

プロローグ
1 卒業生に贈る言葉

第1部 音楽
2 バードとギボンズ
3 ドメニコ・スカルラッティ
4 バッハのフーガの技法
5 バッハの《ゴルトベルク変奏曲》
6 ボトキーのバッハ論
7 モーツァルトをめぐって――ブリューノ・モンサンジョンとの対話
8 グレン・グールド、ベートーヴェンについてグレン・グールドに訊く
9 ベートーヴェンの《悲愴》《月光》《熱情》
10 ベートーヴェンの最後の三つのソナタ
11 ピアノによる「運命」架空批評
12 ベートーヴェンとバッハの協奏曲
13 ブラームスはお好き?
14 ロマン派のめずらしい作曲家を掘り起こすべきか?
15 グリーグとビゼーのピアノ曲と批評家への付言
16 急浮上するマーラーのデータバンク
17 リヒャルト・シュトラウス論
18 リヒャルト・シュトラウスとやがて迎える電子時代
19 リヒャルト・シュトラウスの《イノック・アーデン》
20 シベリウスのピアノ曲
21 アルノルト・シェーンベルク論
22 シェーンベルクのピアノ曲
23 モーツァルトとシェーンベルクのピアノ協奏曲
24 シェーンベルクの室内交響曲第二番
25 鷹、鳩、フランツ・ヨーゼフという名の兎
26 ヒンデミット――終焉か始まりか
27 二つの《マリアの生涯》をめぐる物語
28 スクリャービンとプロコフィエフのピアノ・ソナタ
29 ソヴィエト連邦の音楽
30 アイヴズの交響曲第四番
31 「エルンストなんとかさん」記念文集
32 ベルク、シェーンベルク、クシェネクのピアノ曲
33 コルンゴルトとピアノ・ソナタの危機
34 二十世紀カナダのピアノ曲集
35 十二音主義者のジレンマ
36 ピエール・ブーレーズ伝
37 未来と「フラット=フット・フルージー」
38 テリー・ライリーの《Cで》
39 グールドの作曲した弦楽四重奏曲作品一
40 フーガを書いてごらんなさい

第2部 パフォーマンス
41 拍手を禁止しよう!
42 失格しそうな私たちから敬意をこめて
43 即興の心理
44 批評家を批評する
45 ストコフスキー 六つの場面
46 ルービンシュタインとの対話
47 モード・ハーバーの思い出、またはルービンシュタインの主題による変奏曲
48 ユーディ・メニューイン
49 ペトゥラ・クラーク探求
50 ストライサンドはシュヴァルツコップ

間奏曲
51 グレン・グールド、グレン・グールドについてグレン・グールドに訊く

第3部 テクノロジー
52 録音の将来
53 音楽とテクノロジー――パリ市民への手紙
54 隣りのアウトテイクは常に青い――聴取実験レポート
55 きっとほかに何かある
56 音楽としてのラジオ
57 『北の理念』からプロローグ
58 ラジオ・ドキュメンタリー『北の理念』
59 ラジオ・ドキュメンタリー『遅れてきた人々』

第4部 その他
60-62 ヘルベルト・フォン・ホーホマイスター博士名義の三篇――「撮影上手のCBC」「時代と時を刻む者たちについて」「若者、集団、芸術の精神」
63 グレン・グールドのトロント
64 ポート・チルクート会議
65 事実か空想か歴史心理学か――P・D・Q・バッハ地下活動の手記より
66 十年に一枚のレコード『スイッチト=オン・バッハ』
67 ローズマリーの赤ちゃんたち
68 私が無人島に持参するレコード
69 映画『スローターハウス5』
70 ペイザントのグレン・グールド伝

コーダ
71 ティム・ペイジとの対話

訳者あとがき

出典と解題
索引