スコットランド道徳哲学
感情主義・自然主義・歴史主義

| 判型 | 四六判 |
|---|---|
| 頁数 | 304頁 |
| 定価 | 4,730円 (本体:4,300円) |
| ISBN | 978-4-622-09812-6 |
| Cコード | C1010 |
| 発行予定日 | 2025年12月1日予定 |


| 判型 | 四六判 |
|---|---|
| 頁数 | 304頁 |
| 定価 | 4,730円 (本体:4,300円) |
| ISBN | 978-4-622-09812-6 |
| Cコード | C1010 |
| 発行予定日 | 2025年12月1日予定 |

フランシス・ハチスン、デイヴィッド・ヒューム、アダム・スミスといった個別の思想家の名に比して、彼らを総称するスコットランド哲学の知名度は低く、体系的な研究の歴史も浅い。しかしスコットランド哲学は啓蒙の時代から近代への移行期に不可欠な役割を果たしている。それがスコットランド啓蒙思想と呼ばれるものであるが、その根幹にあるのは道徳哲学である。
その理論的基礎を理解するために重要なポイントは次の三つ。まず、カント主義哲学のような厳格な理性主義とは対照的でスコットランド道徳哲学に特徴的な「感情主義(sentimentalism)」。次に自然神学と経験科学の融合としての「自然主義(naturalism)」。そして市民社会論における「歴史主義(historicism)」である。
これらは思想家たちが積み上げてきた倫理学や法(理)学においてどのような意味をもっているのだろうか。よりよい社会はいかにして実現可能になると、彼らは考えたのだろう。そうした模索が現代にもたらす意義とは何だろうか。
スコットランド哲学の最深部に読者を誘い、〈現在〉をともに考える論考。
はじめに
第I部 スコットランドの感覚主義・感情主義
第1章 感情主義の段階的成立
スコットランド道徳哲学の特殊性
ハチスンのモラル・センス論
第2章 ヒュームとスミスの道徳哲学――感情主義の誕生
ヒュームの情念論と理性主義批判
道徳とは、どのような情念か?
「である/べきである」の区別について
ヒュームの共感理論
アダム・スミスの道徳感情論と共感理論
「不偏の観察者」理論
スミスの倫理学的スタンス
第3章 コモン・センス学派の誕生
コモン・センス論とは
リードとヒュームの違いについて
コモン・センス体系内部のメカニズム
リードとスミスの差異
リードに寄せられる疑念や批判
リードのまとめ
第II部 スコットランド法理学
第4章 揺籃期における自然法論と自然神学
法哲学と法理学との違い
スコットランド法理学の成り立ち
カーマイケルの法理学
スコットランド独自の契約論
カーマイケルの自然神学
第5章 ハチスンの自然法理論
ハチスンの自然法と自然神学
ハチスンの権利論
第6章 ヒュームの法理論
ヒュームのコンヴェンション論
ヒュームは功利主義者か
ヒュームにおける「である/べきである」の区別
第7章 スミスの法理学
スミスの法理論の概要
スミスの権利論
効用ある社会のための権利論
道徳感情の柔軟性
第8章 ケイムズの法理論
法曹としてのケイムズ
道徳哲学者としてのケイムズ
ケイムズの道徳哲学の体系
歴史法学者としてのケイムズ
第III部 政治経済学と市民社会論
第9章 近代スコットランドの市民社会論
ハチスンの政治哲学
第10章 ヒュームの政治思想
ヒュームの契約論批判
ヒュームの混合政体論
政治社会の基礎的条件――権威と自由
商業社会と経済理論
第11章 スミスの市民社会論とポリティカル・エコノミー
スミスの政体論
スミスの経済思想
節制と欲求充足のバランス
スミスの歴史主義
第12章 ファーガソンの市民社会論
共和主義者としてのファーガソン
ファーガソンの三段階説
ファーガソンの退廃論
ファーガソンは回顧的か未来志向的か?
第IV部 スコットランド哲学の意義
第13章 思想体系と現代へもたらした影響
ここまでのまとめ
スコットランド哲学が与えた影響
理性の時代から共感の時代へ
第14章 ヒュームの共感論の現代的意義
ヒュームの共感原理
エンパシーと動機づけ
従来のヒューム解釈を超えて
反共感論とそれへの応答
第15章 アダム・スミス思想の現代的意義
「富」と「徳」の両立可能性
アダム・スミス問題に関する諸議論の批判的検討
スミス特有の自然主義と法理学
終章
感情主義が示唆するものとは?
学び続け、問い続ける
あとがき
参考文献