クロコダイルに魅せられて

| 判型 | 四六判 |
|---|---|
| 頁数 | 208頁 |
| 定価 | 2,860円 (本体:2,600円) |
| ISBN | 978-4-622-09824-9 |
| Cコード | C0040 |
| 発行予定日 | 2025年11月17日予定 |


| 判型 | 四六判 |
|---|---|
| 頁数 | 208頁 |
| 定価 | 2,860円 (本体:2,600円) |
| ISBN | 978-4-622-09824-9 |
| Cコード | C0040 |
| 発行予定日 | 2025年11月17日予定 |

「私が十代のころ、それまで行ったこともないオーストラリアという国で、見たこともない野生のワニの専門家になりたいと言ったとき、学校でも家庭でも本気に受け止める人はいなかった。当然である。ただの思いつきか世迷い言に聞こえただろう。それでも当の本人はそれを我が宿命と確信して、燃え上がるような思いを胸に日本を飛び出してしまった」
(あとがきより)
この本は、ワニについての本ではないし、ワニの研究手法を詳細に伝える本でもない。まさにクロコダイルに魅せられて、ワニの将来にすべてを捧げることを心に決めた男の、生きざまを記した本だ。
そんな彼がこれまで手掛けてきたのは、ワニと人間とが安全に共存するための研究であり、野生のワニが美しい自然のなかで生きているいまの世界を未来永劫守っていくための研究である。
オーストラリアの政府機関で野生ワニの保全に全力を尽くす、唯一無二のワニ研究者はいかにして誕生したのか。淡々とした筆致ながらも熱い思いがじっくりと伝わる、ワニ研究エッセイ。
はじめに
I いかにしてワニの研究者になったのか
第1章 ワニの研究者になりたい
ワニとの出会い/英語の壁/初めてのオーストラリア/やっと合格/大学生活/ワニ園でのボランティア/初めてのフィールドワーク/指導者探し/師匠との出会い/学内発表/必死の反論
第2章 いかにしてワニの研究者になったのか
ワニの学会/政府のワニ研究者/イリエワニ調査/突然の終わり/ひょんなことから就職/父の死/カカドゥの怪人/ついに夢叶う
II ワニの研究という仕事
第3章 ワニの研究という仕事
山積みの課題/ワニの卵の過剰採集/先住民の土地・アーネムランド/収穫量の引き上げ/ワニは何頭いるのか?
第4章 人を襲うワニ
突然の報せ/ワニによる死亡事故/カカドゥでの事故/サンタクロース先生の危惧/恐れていたことが現実に/事故の影響/検死審問と上司の訴え/検死官の指摘/事故記録の欠如/埋もれていた発見
第5章 人とワニの軋轢
ワニによる死亡事故/どんな人が襲われているのか/どんなワニが襲っているのか/ワニに襲われた時の生存率/止まらぬ死亡事故/意外な兆し/ダーウィン湾の問題ワニ/問題ワニはどこから来るのか/新たな上司
第6章 公務員研究者の哲学
研究は税金の無駄/研究の意義/事業仕分け/契約終了の危機/突然の別れ/最後の教え/冬の時代終わる/ミンダナオ島の大ワニ「ロロン」
III ワニの博士になる
第7章 海を渡るワニの謎
行政による研究活動/小さな研究の限界/ワニは海を渡るのか/社会人学生に/資金集め/サンプルの採集/数々の発見/ワニも迷子になる/ワニ形態学の巨人
第8章 東ティモールのワニ
海外からの遺伝子サンプル/東ティモールへ/ディリにて/ワニのシャーマン/分析結果/再訪/ディリにて再び/南海岸/被害者との面談/夜の探索/ワニ族の儀式/ウェブ先生の迫力/イリエワニの亜種/ウェブ先生の引退
IV ワニ保護管理の今とこれから
第9章 保護管理計画の見直し
ワニの商業利用/保護のジレンマ/エコツーリズムとサファリ・ハンティング/再び荒れる世論/予算の増額/パブリックコメント
第10章 これから
学会準備/ワニの系統樹マンダラ/20年ぶりの学会/ジャンピング・クロック/政権交代再び/予期せぬ落胆/これからすべきこと/ポスドク
あとがき