みすず書房

破壊系資本主義 電子書籍あり

民主主義から脱出するリバタリアンたち

CRACK-UP CAPITALISM

Market Radicals and the Dream of a World Without Democracy

判型 四六判
頁数 360頁
定価 3,960円 (本体:3,600円)
ISBN 978-4-622-09830-0
Cコード C0033
発行日 2026年1月16日
電子書籍配信開始日 2026年1月28日
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破壊系資本主義

〈もはや自由と民主主義が両立するとは思っていない。自由至上主義者が取り組むべき大仕事は、あらゆる形態の政治から逃れる方法を見つけることだ〉。テック業界の世界的な大立者で、リバタリアンとしても有名なピーター・ティールは、民主主義なき資本主義という夢をこうぶち上げた。
だが、大仕事に着手したのは彼ではない。徹底的な市場原理に基づいて経営されていた香港。十全の経済的自由を実現しながら民主主義的には不完全な領域……。この「ゾーン」に心酔したのは、新自由主義の偶像ミルトン・フリードマンだ。新自由主義知識人らは、香港をテンプレートとして、ゾーンを世界中に広めることを夢見た。
この夢想は、タックスヘイブン、自由港、経済特区など、さまざまな姿をとった。既存国家の規制から自由な海上都市というSF的構想すら真剣に取り組まれている。ロンドン、シンガポール、南アフリカ、米国、未承認国家ソマリランド、ドバイ、メタバース……実験場は世界各地に及ぶ。
「低能な多数者の専制」を脱出し、ゾーンを建設する願望は、低能とされた人種からの隔離主義や21世紀版植民地主義にしばしば結びつく。テック右派に影響を及ぼすカーティス・ヤービンは、シリコンバレーによるホンジュラスでのゾーン建設構想を〈非欧州人は欧州人に支配されていたときのほうが豊かだった〉と絶賛した。
新自由主義研究の画期を成す歴史家が、急進的市場主義者の夢想と実践を追跡する。

目次

はじめに 崩れ去る世界地図
I 小さな島々の物語
1 世界にもっと香港を
2 ロンドン――美しき廃墟
3 シンガポール方式

II 部族(フュレー)化する世界
4 リバタリアン流のバントゥースタン
5 素晴らしき「国家の死」
6 米国――「新たな中世」のコスプレ族
7 株式会社リヒテンシュタイン

III フランチャイズ国家
8 ソマリ白人のビジネス族
9 ドバイ――法律のバブルドーム
10 ホンジュラス――シリコンバレーの植民計画
11 メタバースのクラウド国
結論 水になれ
謝辞

索引/原注

書評情報

斎藤環
(精神科医)
「国家を穿孔する治外法権ゾーン」
毎日新聞 2026年4月25日
下村晃平
(立命館大学専門研究員・社会学)
「民主的統制を逃れんとする資本――リバタリアンの構想とネットワークを活写」
週刊読書人 2026年4月17日
古山裕樹
「国家を壊す『ゾーン』とは」
(書評家)
産経新聞 2026年3月22日
隅田聡一郎
「自由至上主義の『実験場』」
沖縄タイムス 2026年2月28日など(共同通信配信)
高谷幸
(東京大学准教授・社会学)
「世界を崩す治外法権的『ゾーン』」
朝日新聞 2026年2月21日
根井雅弘
(京都大教授)
「拡大する治外法権的経済領域」
北海道新聞 2026年2月15日
田中秀臣
(経済学者)
「なぜトランプ大統領は「同盟国」にも無理難題を押し付けるのか?「関税」「グリーンランド領有」…破壊系資本主義の実情を知る」
週刊新潮 2026年2月12日号

関連リンク

松島聖子「極端な市場主義者が世界を壊す」

訳者あとがき(WEBみすず no. 29[2026年2月号]寄稿)

試し読み「はじめに 崩れ去る世界地図」

(WEBみすずサイト「新刊紹介」)