みすず書房

写真家・中井菜央は、外界のさきに、内界に潜むものを見いだす方法によって、「私とは、世界とはなにか」を問い続けてきた。
世界そのものはけして知られず、カメラは客観的に、人は主観的に、世界を現れ(表象)として捉える。「写真」において、客観と主観は総合され、世界そのものと私そのものを垣間見ようとする。
「水脈」は心の深奥の無意識、「ゆれる」は無意識の非言語の意思表示。それは中井の写真制作の指標であり、その事情は本書でも変わらない。中井は、生きる「水脈」が論理的な整流でも、ただ混乱した流れでもないといい、テキストでは、観念が、記憶が、思いが、その流れを模して構成されていく。
「私」を一般化せず、「私」を「私」のままに、中井は半生と制作経験の記述を通じ、「撮る者にとって写真というものが何であり得るか」を示す。

カメラと写真によって、言葉の外を歩む写真家が、言葉の内へと訪い、言葉によって「写真」を写し出す異色の書。所収のカラー写真46枚は全て撮り下ろし。

関連リンク

WEBみすず 表紙

写真・中井菜央(magazine.msz.co.jp)