みすず書房

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『エミリ・ディキンスン家のネズミ』

エリザベス・スパイアーズ作/クレア・A・ニヴォラ絵/長田弘訳

9月21日いよいよ刊行!!

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なぜ、羽海野チカのコミックを映画化した『ハチミツとクローバー』(「ハチクロ」)の冒頭シーンに、エミリ・ディキンスンの詩「クローバーと蜜蜂」の一節が登場するのか、それはちょっとした運命のいたずらだったらしい。でも、映画を観た人のなかには、「エミリ・ディキンスンって誰?」「この詩は本当にあった詩?」と思って、あとで調べた人が何人もいたのだった。

エミリはアメリカ19世紀の偉大な詩人。そして本書はこのエミリと、彼女の部屋に住む若いネズミ、エマラインの密やかな交流の物語だ。愛らしくてハラハラドキドキのストーリーと、イラストいっぱいの小さな本。
実在したエミリは、あるとき失恋の痛手から、自宅の庭より遠くには行かなくなり、訪ねてくる人にもほとんど会わずに、生涯ひたすら詩を書いていた。しかし生前に発表された詩はわずかで、その斬新さも理解されず、55歳で病死。そのあと、手縫いの小袋40個にしまわれた900篇を超える詩稿が出てきたのだった。妹ラヴィニアの尽力で、エミリの詩集は1890年、エミリの死後5年経って刊行され、すぐに大きな成功を収めることになる(本書に登場するラヴィニアはちょっと意地悪で、気の毒な気がする)。
原作者のスパイアーズも、アメリカでは著名な詩人。絵を描いたニヴォラは、エマラインにそっくりのネズミを実際に飼っていたとか。また、物語に登場する編集者、ヒギンスンさんも実在したひと。なんだか不思議な、この魅力ある作品を、詩人長田弘の名訳でお届けする。物語に編みこまれたエミリの詩はすべて新訳。小学校上級から熟年まで年齢を問わず、エミリとエマライン、ふたり(?)の織りなす世界に引きこまれること必至です。そしてエマラインを通して、読者もきっとエミリと、エミリの詩に出会う。

 



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