みすず書房

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オンデマンド版『陸羯南全集』

[全10巻]

明治期に新聞「日本」の主筆として、世論に大きな影響を与えた、陸羯南(くが・かつなん)。広く国際政治に目を向け、「国民主義」という立場から、日本の政治のあり方を深く鋭く論じた社説を、オンデマンド版にて復刻いたしました。

  • 菊判上製 各巻平均680 頁
  • 全10冊揃定価173,250円(揃本体価格165,000円) 分売可
  • ご注文に応じて製作いたします。お届けするまで2週間ほどかかりますことを予めご了承ください(キャンセル不可)。

今年は陸羯南の生誕150年、没後100年にあたります。郷里の青森県弘前市では、弘前市立郷土文学館を会場に年末12月28日まで「政論記者 陸羯南 生誕150年・没後100年展」が開かれています。

弘前市役所「市内の主なイベントや行事予定」
http://www.city.hirosaki.aomori.jp/kurashi/event/gyouji/index.html
弘前市立郷土文学館
http://hello.net.pref.aomori.jp/hirosaki/culture/kyodobungaku.html

また青森県立近代文学館では館制作のDVD「ルポライター鎌田慧 陸羯南を語る」を鑑賞できます。

青森県立近代文学館
http://www.plib.net.pref.aomori.jp/top/museum/index.html

オンデマンド版『陸羯南』の内容

■第一巻 「近時政論考」ほか
陸羯南の生存中に「東京電報」や「日本」に発表された社説をまとめた単行本4冊、憲法・自由主義・政治思想について論じた『近時政論考』、国家予算について欧米の考え方との比較で説いた『予算論』、行政のあり方について具体的な提言を行った『行政時言』、立憲政治や外交政策の問題点について考察した『原政乃国際論』、およびド・メーストルを翻訳した『主権言論』、「東京電報」の無署名社説を収録する。
・ISBN978-4-622-06191-5 C3331
・定価17850円(本体17000円)
■第二巻 「日本」社説 明治22年-23年
11日、大日本帝国憲法が発布された日に、「東京電報」を発展解消して「日本」を創刊した陸羯南。「「日本」は国民精神の回復発揚を自任すと雖も泰西文明の善美は之を知らざるにあらず。……故に「日本」は狭隘なる攘夷論の再興にあらず。博愛の間に国民精神を回復発揚するものなり。」(創刊の辞より)条約改正と憲法制定・帝国議会開設が焦点だった時期、条約改正案反対の鋭い論調を展開する。
・ISBN978-4-622-06192-2 C3331
・定価21000円(本体20000円)
■第三巻 「日本」および「大日本」社説 明治24年-25年
大津事件、第二回総選挙と選挙干渉、議会では予算審議権をめぐる衆議院と貴族院の対決、民法典論争が起きていた。第一次松方内閣が軍部の干渉により総辞職を余儀なくされたことに「之を忌み之を嫉み、己の奴隷たる無頼の徒を使嗾して脅迫の威を示す。嗚呼是れ政界の賊なり。」と批判した「武臣千政論」。ほか新聞紙条例による言論弾圧への批難など。発行停止処分時の代替紙「大日本」の社説を併せて収録する。
・ISBN978-4-622-06193-9 C3331
・定価18900円(本体18000円)
■第四巻 「日本」および「大日本」社説 明治26年-27年
明治26年は、「内治論の乱世」から推移して、「国家の第一義は、対外的立国の基礎を確立するに在ることを深感」する対外論の勃興した時である。新聞「日本」もまた、条約厲行問題をもって伊藤内閣に迫り、発行停止の集中的な弾圧をこうむった。翌27年、日清戦争を機として、民権論と国権論の両極をはらんだ明治期の思想は、国権論へと大きく傾いた。戦争に対するリアルな眼を失わない卓抜な証言を収録。
・ISBN978-4-622-06194-6 C3331
・定価18900円(本体18000円)
■第五巻 「日本」社説 明治28年-30年
日清戦争の勝利、有頂天に達した世論は、講和条約直後の三国干渉によってその酔いをさまされて、膨張的国家論が抬頭してきた。「戦後経営」の美名に隠れて軍備拡張をはかる内閣、その走狗となり、立法権の一部をさえ行政権に割与するかつての自由主義を高唱した党派。「日本」社説に示された批判は、近代政治の原則を把持しつつ、リベラリズムとナショナリズムを結合した「日本主義」を最も良く表現する。
・ISBN978-4-622-06195-3 C3331
・定価16800円(本体16000円)
■第六巻 「日本」社説 明治31年-33年
世紀末を迎えて欧米列強のアジア進出は急迫し、中国分割は現実の日程にのぼった。明治33年には義和団事件が起こる。「日本」社説においては、一方で国民の発展・膨張を是とし、欧米列強にたいする国家間の勢力均衡をはかる視点から論じる。また一方で政党に対して自由・平等・国際的平和の理想の保持を訴える。この矛盾と混乱を抱えながら歴史の現実と向きあった議論は、その後の政治の流れを暗示していた。
・ISBN978-4-622-06196-0 C3331
・定価16800円(本体16000円)
■第七巻 「日本」社説 明治34年-35年
日英同盟の成立と共に国際舞台に登場した日本は、内には足尾鉱毒事件の社会問題の発生を見る。陸羯南はそのなかで現実の日本の「近代国家」への跳躍に、大きな問題があることを捉えていた。それは松方・井上・山形による「元老政治」であり、「議院政治」を理念として対峙させる。「帝国」イデオロギーの蔓延する状況のなかで、歴史と近代政治の原理に対する柔軟な理解に基づく、自由主義的な思想が示される。
・ISBN978-4-622-06197-7 C3331
・定価16800円(本体16000円)
■第八巻 「日本」社説 明治36年-37年
日露戦争開始前後の時期。陸羯南は日露戦争を、文明と野蛮、黄色人種の立憲国と白色人種の専制国との間の戦争である、と主張する。日露の軍隊の士気の相違を立憲か否かという政治体制に関係づけて説明する論理、人種論に対して文明の普遍性を強調する傾向は、注目すべき意味を持っている。しかし多面では、中国・朝鮮への抑圧の論理にも転化した。近代国家へと成長しようとする、時代の試練を反映した社説。
・ISBN978-4-622-06198-4 C3331
・定価15750円(本体15000円)
■第九巻 「日本」社説 明治38年-39年6月ほか
明治39年、日露戦争勝利の翌年、「日本」は陸羯南の手を離れ、40年には羯南も逝く。最後の二年の社説。ほかに「日本人」「持論」「出版月評」などの雑誌に載せた論文・随筆・書評を収録。論文では政党・憲法・条約改正・外交政策について政治の原則を論じている。また各々その個性を異にしながらも、羯南を中心とした一つの調和を醸し出す世界が見出される、正岡子規・愚庵・三宅雪嶺・高橋健三の書への序跋。
・ISBN978-4-622-06199-1 C3331
・定価17850円(本体17000円)
■第十巻 書簡・詩歌・回想・補遺・年譜
書簡は、陸羯南の書簡および羯南宛の書簡444通を収録。原敬・谷千城・品川弥二郎・井上毅・近衛篤麿・徳富蘇峰・三宅雪嶺・正岡子規の名が見え、ジャーナリズム史・政治史の貴重な証言も含まれる。また発行停止処分と財政的困難のなかで、現実レベルで「言論の自由」の確保に努めた姿勢を読むことができる。また池辺三山・丸山幹治・長谷川如是閑による回想は、日常の行為のなかにその思想を浮彫りにする。
・ISBN978-4-622-06200-4 C3331
・定価12600円(本体12000円)

陸羯南(くが・かつなん 1857-1907)
明治期のジャーナリスト。1857年弘前藩に生れる。1874年官立宮城師範学校に入学。1876年退校。1878年司法省法学校に入学。1879年退校。青森新聞社、紋鼈製糖所、太政官文書局に勤めた後、1888年「東京電報」を創刊する。翌1898年「日本」を創刊、主筆兼社長として、「国民主義」の立場から内外の政治を鋭く論じた。また池辺三山、三宅雪嶺、長谷川如是閑といったジャーナリストが集い、正岡子規が俳句を発表する。1906年病気のために「日本」を退き、翌1907年歿する。




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