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ブルーノ・ムナーリ 生誕100年

『ファンタジア』『デザインとヴィジュアル・コミュニケーション』
『モノからモノが生まれる』を読もう

今年は、イタリア・ミラノ出身のデザイナー、ブルーノ・ムナーリの生誕100年。
各地で記念の展示が催されています。

そんな最中の12月初旬、ブルーノの息子、アルベルト・ムナーリ氏が来日しました。アルベルトといえば、ブルーノに「読んであげる面白い絵本がない」と、仕掛け絵本をつくらせた張本人。アルベルト氏は現在、ジャン・ピアジェに学んだ認知心理学者として、教育者を養成するための活動をつづけています。父がつくった児童のためのワークショップを理論化した「ムナーリ・メソッド」の普及にも取り組んでいます。
汐留イタリア、こどもの城(青山)で行われたアルベルト氏の講演は、父親の活動を第三者の立場、また児童教育の研究者として分析したものでした。
アルベルトは、父ブルーノが力を注ぎつづけた造形教育活動への情熱を突き動かし、それを支えたものとして、次の3つがあると指摘しています。

1.芸術の民主化への思い
2.世界の成り立ちを知りたいという好奇心
3.人との出会い

若い頃のムナーリは、具体芸術運動や未来派のグループに参加し、仲間とともに表現活動を行っています。しかし、やがてどちらからも離れてゆくのです。それは、一部のメンバーが集まったグループによる活動は、結局のことろ芸術を特権化しているのではないか、という疑問を抱いたからのようです。
世界の成り立ちを知りたい、という好奇心は、すこし注意深く見てみれば、ムナーリの作品全てが生物学的な観点を主題にして展開されていることに気づくでしょう。幹の分枝構造を教える『木をかこう』やそのワークショップ、「陰と陽」のデッサン、またデザイン理論の基礎として繰り返し取り上げているモデュール……。小社から刊行した3点の著書には、世界の成り立ちを知ろうとすること、それを解体して基本単位にいきつくこと、そしてそれによって世界を自分の力で再構築することの方法論、醍醐味が、具体的な言葉でつづられています。
そして、人との出会い。アルベルト氏は、毎夏のヴァカンスで滞在した、緑豊かな町モンテ・オリンピーノ(コモ市)でのエピソードを語ってくれました。そこには、キアッソ&マルチェッロという映画狂いの兄弟の家があり、ブルーノは二人のラボを訪ねては実験的な映像を作って遊んでいたそう。また、地域の教育関係の要人ともこの町で知り合い、そこから子どもたちとのワークショップの活動が具体化・発展していったのだそうです。
こんな風に、ムナーリの活動は、ほとんどにおいて、大切な人を喜ばせることから始まっています。彼の手から生まれたもののなかでも、ムナーリからの手紙がもっともムナーリらしい作品、と感じられてしまうのは、きっと私だけではないでしょう?

(つづいてブルーノ・ムナーリ『芸術家とデザイナー』を、この冬刊行の予定です)

■展覧会のご案内

「ブルーノ・ムナーリ展 しごとに関係ある人 出入り おことわり」
Shiodomeitaliaクリエイティブ・センター(東京・汐留)
2008年1月27日(日)まで
http://www.shiodomeitalia.com/
「生誕100年記念 ブルーノ・ムナーリ あの手 この手」展
板橋区立美術館(東京)
2008年1月14日(日)まで
http://www.city.itabashi.tokyo.jp/art/schedule/e2007-05.html
「Danese:プロダクトの編集者」展
武蔵野美術大学美術資料図書館(東京)
2007年12月15日(土)まで〔終了〕
http://www.musabi.ac.jp/library/muse/tenrankai/index.html

硬いプラスチックの本では、霧のなかにネコがいる。……(『モノからモノが生まれる』231ページ)


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