みすず書房

イデーン II‐II

構成についての現象学的諸研究

IDEEN ZU EINER REINEN PHANOMENOLOGIE UND PHANOMENOLOGISCHEN PHILOSOPHIE

判型 A5判
頁数 336頁
定価 6,600円 (本体:6,000円)
ISBN 978-4-622-01919-0
Cコード C3010
発行日 2009年2月25日
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イデーン II‐II

「精神はそれ自身の環境世界によって規定されており、しかも人格的な世界との相対関係の中で構成される自然と関係することによって、いろいろな種類の依存関係を示している以上、精神は自然との調整も行なっている。しかしこのことは、精神が絶対的、非相対的であることを妨げはしない。すなわち、もしもわれわれがすべての精神を世界から抹消すれば、もはや自然は存在しない。しかしもしわれわれが自然を、すなわち《真の》客観的‐間主観的な現存在を抹消するとしても、いぜんとして或るものが、すなわち個人的な精神としての精神はつねに残存している。ただし社会性の可能性は、つまり〈身体の何らかの間主観性を前提する共握〉の可能性は失われる。その場合われわれは個人的な精神をもはや〈物質的な世界と関係することによって、人格的な世界とも関係する、狭義の社会的な意味での人格〉としてもってはいない。《個人的な》生活がどれほど貧弱になろうと、やはりわれわれはともかく〈自己の意識生活を具えた自我〉を保持しているのであり、そしてその自我は、そうした貧しさの中でも自分の判断や評価の仕方や、自分の態度を決める際の動機づけられ方の点で、各自の個性を保持しているのである」

心とは、他者とは、環境世界とは、私とは。自然であると同時に精神でもある人間は、いかに世界を認識し、世界の一員となっているか。『イデーン』第二巻第二分冊である本書には、感情移入論から間主観的身体、生活世界、受動性・受容性問題など、後期フッサールのテーマも出揃い、著者の思考の格闘が生々しく描かれる。

目次

凡例

純粋現象学と現象学的哲学のための諸構想(イデーン)

第二巻 構成についての現象学的諸研究(承前)
第三篇  精神的世界の構成
48 序 論
第一章 自然主義的な世界と人格主義的な世界との対立
49 自然主義的な見方と対立する人格主義的な見方
50 環境世界の中心点としての人格
51 人格集団内での人格
52 主観的な現出の多様性と客観的な諸事物
53 自然についての考察と精神についての考察との相互関係
第二章 精神的世界の基本法則としての動機づけ
54 自己内省(inspectio sui)される自我
55 環境世界に関与する精神的自我
56 精神生活の基本的な法則性としての動機づけ
57 純粋自我と、反省的な自己統覚の客観としての個人的自我
58 反省に先立つ個人的な自我の構成
59 諸能力の主体としての自我
61精神的自我とその基盤
第三章 自然主義的な世界に対する精神的世界の存在論的優位
62 人格主義的な見方と自然主義的な見方との絡み合い
63 心理物理的並行論と相互作用
64 自然の相対性と精神の絶対性

付論
訳注
訳者あとがき
索引

書評情報

佐野衛(東京堂書店神田本店・本部長)
週刊読書人「上半期の収穫から」2009年7月31日(金)

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