みすず書房

精神病理学原論

ALLGEMEINE PSYCHOPATHOLOGIE

判型 A5判 タテ210mm×ヨコ148mm
頁数 416頁
定価 6,380円 (本体:5,800円)
ISBN 978-4-622-02224-4
Cコード C3047
発行日 1971年6月10日
備考 現在品切
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精神病理学原論

「すばらしい、クレペリンをはるかに凌ぐものだ。」これは本書のゲラ刷りを読んだヤスパースの師ニッスル(ハイデルベルク大学精神科教授)の感嘆の言葉であった。1913年に出版された本書は、まさに精神医学の流れを変えた名著であって、ここに初めてわが国に紹介されるものである。(邦訳『精神病理学総論』は第5版にもとづき、この第1版とは全くおもむきの違った新著作とされている。)
当時支配的だったクレペリン的な客観的観察に主体をおく自然科学的精神医学は、彼を満足させなかった。「精神病は脳疾患である」(グリージンカー)や「精神病は人格疾患である」(シューレ)の命題も、人間の全体を包括する精神医学の要求を充たすものではなかった。こうして彼の精神科学に固有の方法が本書第1版として結実した。第4版以後の厖大かつ複雑難解な哲学的思惟に比して、若々しい緊張に溢れ、現象学と了解心理学の根本意義の全容は明確に示されている。フッサールとディルタイの方法が、ここに新しい生命をもって蘇ったのである。
豊富な症例によって、それが、どのように、いかなる限界において事実的と見なされるかを、読者は本書から学ぶことができる。

目次

序言
緒言
1. 精神病理学総論とは何か
2. 精神病理学における諸先入見
3. 基本概念と方法
4. 内容の概観

第一章 病的精神生活の主観的現象(現象学)
第一節 異常な精神生活の諸要素
1. 対象意識
2. 人格意識
3. 感情と気分
4. 欲動と意志
第二節 精神生活の経過様式の一般的性質
1. 注意
2. 意識状態
3. 精神生活の経過の障害
4. 精神生活の分化度
5. 感情移入可能及び不能の精神生活(自然な精神生活と分裂性の精神生活)

第二章 精神生活の客観的症状と作業(客観的精神病理学)
第一節 精神物理的装置の作業(客観的精神病理学)
1. 知覚の障害
2. 理解と見当識
3. 連合機構
4. 記憶の障害
5. 運動現象
6. 言語障害
7. 作業能力
第二節 精神的な出来事の身体的随伴現象と続発現象(症状的心理学)
第三節 精神の表現(表現心理学)
1. 身振り、相貌、筆蹟
2. 理性的内容
3. 患者の文学的作品
4. 絵画、芸術、手芸品
5. 行動と生活態度

第三章 精神生活の関連、その一了解的関連
第一節 了解的関連
第二節 異常機構の際の了解的関連
1. 病的反応
2. 暗示
3. 以前の経験が後に及ぼす影響
4. 精神的関連の分離
第三節 病気に対する患者の態度

第四章 精神生活の関連、その二因果的関連
第一節 諸現象と諸機構の原因
第二節 外因性原因の作用
1. 脳の病的過程
2. 中毒
3. 疲労と困憊
4. 身体疾患
5. 天候、気候、時刻、季節
6. 「精神的原因」
第三節 内因性原因の作用
1. 素質
2. 遺伝
3. 年齢
4. 男性と女性
5. 民族
第四節 経過の諸型
1. 発作、発病期、週期
2. 病的過程
3. 人格の発展

第五章 精神生活の全体、知能と人格
第一節 知能
1. 知能の分析
2. 痴呆の諸型
3. 知能の検査
第二節 人格
1. 概念の規定
2. 人格分析の諸方向
3. 人格類型
4. 人格の種類と精神病の種類との関係

第六章 病像の組立て
病状群
1. 急性精神病と慢性精神病
2. 異常感情状態症状群
3. 意識変化症状群・譫妄、アメンチア、朦朧状態
4. 「狂気」の精神生活の症状群・妄想症状群、緊張症状群
5. 器質性症状群
6. 神経質症状群
7. 体験の諸型

第七章 異常精神生活の社会学的関係
第一節 異常精神現象に対する社会状態の意義
第二節 社会に対する異常精神現象の意義

附録
1. 患者の検査について
2. 治療の課題について
3. 歴史的なこと

訳者あとがき
索引

主著Allgemeine Psychopathologieの邦訳です

精神医学者・哲学者カール・ヤスパースの主著ALLGEMEINE PSYCHOPATHOLOGIEの邦訳です。巻末に付された西丸四方による訳者あとがき(1970年12月)に、

「この本は精神病理学総論の初版の訳である。出版は1913年で原著者の生れは1883年であり〔中略〕大学を出て5年、30歳の時の著書であり、彼の多くの著書の中で最初のものである。〔中略〕以前本書の最新版が私も加わって訳されたので(精神病理学総論、三巻、岩波版)、今さら古い版の訳は必要でないかもしれないが、大成された新版は完璧ではあるものの、非常にむずかしくて読みにくいので、生れたばかりの、イン スタートゥ ナスセンディの旧版は非常に読みやすいために、新版への入門書ともなろうと思ってあえて公にしたのである。また新版の根本的なものはすでに旧版に尽くされているところから、原著者の本来の意向を知るために旧版の訳をあらわすことも無意味ではなかろう〔後略〕」