みすず書房

ヒューマニズムとテロル【新装版】

共産主義の問題に関する試論

判型 四六判
頁数 368頁
定価 3,960円 (本体:3,600円)
ISBN 978-4-622-09021-2
Cコード C1010
発行日 2021年5月20日
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ヒューマニズムとテロル【新装版】

自由主義陣営と暴力的な共産主義という図式が流布していた1947年に書かれた本書は、ベルリンの壁とソ連崩壊後に生きるわれわれに何を投げかけてくるのだろうか? 批判的考察の対象とされているのは、1940年代に書かれたケストラーの作品、そして1938年のモスクワ裁判である。今では遠ざかってしまった時代のこうした事柄をとりあげた本書を、しかし一貫して流れているのは「暴力とは何か」という、まさに今日的な問題である。

「絶対的非暴力は結局のところ、すでにでき上がった世界、それもうまくでき上がった世界という観念に立脚している。」
「われわれは純粋さと暴力のあいだで選択するのではなく、多様な種類の暴力のあいだで選択するのである。われわれが受肉している限りで、暴力とはわれわれの宿命なのだ。」

こうしたメルロ=ポンティの言葉は、かつてないほど世界のそこここで暴力の遍在を感じざるをえない今、リアリティをもって読む者に迫る。
ケストラー作品について、またモスクワ粛正裁判についての情報を記した詳細な訳者解題、さらに附論として、シェーラー、マルセル、サルトル作の3編への書評を収める。

[初版2002年7月10日発行]

目次

ヒューマニズムとテロル
序文

第一部 テロル
第一章 ケストラーのディレンマ
第二章 ブハーリンによる歴史の両義性
第三章 トロツキーの合理主義

第二部 ヒューマニズム的展望
第一章 プロレタリアから人民委員へ
第二章 行者とプロレタリア

結論

キリスト教とルサンチマン

『存在と所有』

ジャン=ポール・サルトル『想像力』

『ヒューマニズムとテロル』解題  合田正人
解説  木田元