みすず書房

この『現代史断章』は、注目の「レーニン論」を柱に、未完の「マンハイム論」、そして今は読者の目に触れることもない「ハンガリー問題をめぐって」「狂気からの解放——キューバ封鎖に思う」「ポーランドの問題について考えたこと」の諸篇と、未公刊の「レーニン論」のための「準備稿」、今回新たに書下ろされたレーニンの理論的著作群をめぐる「補註」とで構成される。

「レーニン論」は、普遍的価値としての民主主義が20世紀初頭の革命期ロシアで、「プロレタリア民主主義」として実現した様を、レーニンの思想構造の分析を通して明らかにしたものである。それは「準備稿」において、リップマン、チャーチルをとらえ、民主主義がいかに実現されたかを問題にしたのと同じ動機である。社会主義・マルクス主義の現代史的様相に関わる折々の諸篇の視線もまた、「ソ連崩壊後」を見透している。この「普遍主義者」の「方法的精神態度」は終始一貫しているのである。