みすず書房

未曾有の世界大戦という経験から掴み出されてきた「死の本能」。その概念は、大きな論争を引き起こし、さらには今まで営々として築きあげられてきた精神分析の理論そのものにも根本的な変更を要求するものだった。それを契機に、フロイトは果敢にも自らの学を拡大し、深化させる方向にむかった。ここに精神分析の新たな体系が完成することになったのである。そしてそれは同時にまた、フロイトの眼前に、文明や宗教といったものの起源をあざやかに蘇らせることにもなったのである……。

精神分析という学の完成、それにともなうさまざまな軋轢と、親密だった弟子たちの相次ぐ離反。さらには身近な者たちに降りかかる理不尽な死。時代の流れに立ち向かい、さらには自らの「死」さえも自由のなかに選び取ったフロイトの後半生を見事に描き切った決定版伝記、待望の完結編。本書完成にあたって著者ピーター・ゲイは述懐している、「自分の人生でこれ以外のことは何もしてこなかったのではないか」、と。全2巻