認識問題 3
近代の哲学と科学における
DAS ERKENNTNISPROBLEM
判型 | A5判 |
---|---|
頁数 | 560頁 |
定価 | 8,800円 (本体:8,000円) |
ISBN | 978-4-622-03193-2 |
Cコード | C3010 |
発行日 | 2013年6月21日 |
備考 | 現在品切 |
DAS ERKENNTNISPROBLEM
判型 | A5判 |
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頁数 | 560頁 |
定価 | 8,800円 (本体:8,000円) |
ISBN | 978-4-622-03193-2 |
Cコード | C3010 |
発行日 | 2013年6月21日 |
備考 | 現在品切 |
〈カント以後の体系は、毀誉褒貶こそ激しかったものの、その固有の思想的動機から解明され評価されたためしはほとんどなかった。本書ではこうした解明を試みた後ではじめて、忌憚のない内容的批判に着手した。カント以後の偉大な体系のほとんどすべてが辿った運命は、これらの体系への無批判な熱狂の後に、これまた無批判な非難がやってきたということである。今日ようやくわれわれは、ほどよい距離をとりながら、これらの体系に真の歴史的客観性をもって対処できるようになったと思われる〉
ルネサンス以前から20世紀まで、クザヌス、デカルトからホッブズ、スピノザ、ライプニッツ、カント、モムゼン、ブルクハルトまでを独自の方法意識で描いたドイツの碩学、カッシーラーの記念碑的哲学史、全4巻・5冊の画期的訳業がここに完結する。本巻はカント以後、ヤコービ、ラインホルト、マイモンに始まり、フィヒテ、シェリング、ヘーゲル、ヘルバルト、ショーペンハウアー、フリースまでを描く。
序言
序論
カントとカント以後の体系/批判的根本思想の内容と叙述の対立/認識の「形式」と「質料」の対立/「アポリオリ」と「アポステリオリ」の対立/「普遍的なもの」と「特殊なもの」/形式的合目的性の原理/悟性法則の特殊化
第一章「経験の対象」と「物自体」
1 フリードリヒ・ハインリヒ・ヤコービ
現実存在の問題/スピノザの思惟形式への批判/批判的観念論の方法/相対主義としての批判的観念論/存在と思惟の関係/カントの「物自体」の学説における矛盾/信念の原理/ヤコービの信念の学説の欠陥
2 ラインホルト
第1節 根元哲学の方法と「意識律」
ラインホルトの体系における心理学の位置/表象能力の概念/心理学的分析と現象学的分析/知の最高原則と矛盾律/ラインホルトの根本命題/主観概念と客観概念のあいまいさ/表象の素材と形式/ラインホルトの方法論の破綻
第2節 「物自体」の概念と問題
物自体の表象不可能性/概念としての「物自体」と実在根拠としての「物自体」/疑わしい事実としての「経験の事実」/「表象能力」批判と認識批判
3 エーネジデムス
エーネジデムスの懐疑の根本傾向/認識の素材と形式/ラインホルトの根本概念の多義性/因果概念の批判/「哲学の論理学」の問題/エーネジデムスの批判の多産性と限界
4 ヤーコプ・ジギスムント・ベック
知と対象の「紐帯」/客観性にかんする批判的学説の更新/カテゴリーと「根源的表象作用」/要請としてのカテゴリー/「根源的悟性使用」の立場
5 ザーロモン・マイモン
その思惟形式と文体
第1節 「所与」の概念とヒュームの問題「認識の対象」の概念/模写説の克服/ラインホルトの根元哲学への批判/表象と直観/「所与」の概念/ヒュームの問題の更新/理性の真理と事実の真理
第2節「無限悟性」の理念と微分の理論
微分と感覚/認識客観の特殊化と微分概念/「可想体」としての微分/微分概念と限界概念
第3節 規定可能性の原理
アプリオリな認識内部の特殊化/「アプリオリな所与性」/マイモンの懐疑の基本傾向/思惟の三つの根本形式/実在的思惟と規定可能性の原理/「恒常的なもの」と「必然的なもの」/論理学と超越論哲学の関係/因果的思惟の批判/マイモンとカントにおける「理念」/悟性理念と理性理念/理念と虚構
第二章 フィヒテ
第1節 知識学の基礎づけ
フィヒテのマイモンにたいする関係/「所与性」の問題の新しい表現/実践理性における理論理性の基礎づけ/自己の形式と経験の形式/批判的統一概念とスピノザ哲学の統一概念/事行としての同一性/フィヒテ的「構成」の方法的意味/知識学の基礎づけと第一根本命題/知識における統一性と他性/知識とその対象/分割可能な自我と分割可能な非我の反定立/自我と非我の対立の批判的規定と独断的規定/「能動と受動の相関」/「自我の触発」とその「根拠」/実践的観念論としての批判的観念論/自己意識の諸段階/出的想像力の学説
第2節 無神論論争とフィヒテの宗教哲学の基礎づけ
フィヒテ哲学の方法/発生的構成という概念/事実的なものと英知的なもの/アプリオリとアポステリオリの関係/宗教哲学の根本問題/神の概念と存在概念/秩序という根本概念
第3節 絶対者と知識
知識と存在/存在概念のさまざまな規定/事物の形式とも自我の形式とも異なる「理性」/構成の自由と法則/存在と自由/「絶対者」という概念の意味と内実/純粋な行為としての絶対者/知識学の「ニヒリズム」/個体性の問題/絶対者と見ること/絶対者の現象としての知識作用/フィヒテの学説の倫理的出発点
第4節 フィヒテ哲学の問題と方法
実践理性の優位/法則概念の中心的な意味/倫理学と宗教の関係/「倫理法則の直観可能性」としての生/カントにおける絶対者とカント以後の体系における絶対者/自己意識にたいする絶対者の関係/価値規定としての絶対者と存在根拠としての絶対者/現実的なものと超現実的なもの
第三章 シェリング
第1節 自然哲学の基礎づけと超越論的観念論の体系
哲学の原理としての自我/無制約なものとしての自我/哲学の倫理的な根本前提/自然と精神の対立/「有機的なものの自律性」/「現象における自律性」としての生/所産としての自然と生産性としての自然/フィヒテとシェリングにおける自然概念/特殊な質の問題/自然過程の諸段階/超越論的哲学と自然哲学の関係/同一哲学への移行/有機体と芸術作品/倫理的自然観と美的自然観/主観的なものと客観的なものの無差別としての理性/主観的なものと客観的なものの量的な差異/理念論とその美的意味/絶対者と特殊なものの統一性としての理念
第2節 シェリング哲学の認識原理
哲学の新しい機関/構成という概念/構成的世界観と経験的世界観/数学における構成と哲学における構成/シェリングの構成の限界/知的直観の原理とその歴史的諸前提/『判断力批判』の影響/シェリングのゲーテにたいする関係/シェリングの自然観とゲーテの自然観の対立/シェリングとカントにおける理念
第3節 シェリング哲学の結末
シェリング哲学のさまざまな時期/自由問題/ヘーゲルの体系にたいするシェリングの批判/積極哲学と消極哲学/シェリング哲学の始まりと終わり
第四章 ヘーゲル
第1節 カントとヘーゲルにおける総合の概念
対立物の統一としての総合/客観性問題の新たなとらえ方/愛の概念/国家の理念
第2節 反省哲学の批判
二元論としてのカントの学説/カントの「物自体」説の批判/フィヒテ哲学の批判/ヤコービとシュライエルマッハーにたいする関係
第3節 弁証法的な方法の歴史的位置と体系的位置
シェリング的方法の批判
第4節 『精神現象学』
思想の、客観性への三つの態度/『精神現象学』の一般的な課題/感覚的確信の弁証法/悟性の国と力の概念
第5節 ヘーゲル論理学の構造
『論理学』の『精神現象学』への関係/論理学体系における個別的契機の位置/存在と無/質/度量のカテゴリー/規則としての度量と、特殊的な〔比率的な〕度量としての度量/本質にかんする学説/本質と現象/現実存在という概念/現実性の概念/判断/推論/機械論、化学的連関、目的連関/生/終点としての方法
第6節 批判的観念論と絶対的観念論
原型的知性と模写的知性/超越論的方法と弁証法的方法/疑似運動としての弁証法的運動/ヘーゲルの論理学の目標と方法の矛盾/カントの体系概念とヘーゲルの体系概念/精神的文化形式への哲学の関係/ヘーゲルの体系における自然の位置/ヘーゲルの体系における二元論
第五章 ヘルバルト
第1節 関係の方法
思考と存在/与件に含まれる矛盾/ヘルバルトの方法と経験的心理学/認識の形式と実質/存在への指示としての仮象/形式諸概念の体系/関係づけの方法/「偶然的見解」の学説/絶対的措定としての存在
第2節 「実在」にかんする学説
実在とその自己保存/表象空間と英知的空間/カントの「物自体」概念とヘルバルトの「物自体」概念/諸実在物の、空間・時間への関係/現実的出来事にかんする学説/形而上学的世界観と自然科学的世界観/ヘルバルトの形而上学にたいする批判
第六章 ショーペンハウアー
認識理論の基礎としての生理学
第1節 生理学的認識論と表象としての世界
脳の産物としての世界/意志という根源的現象
第2節 形而上学的認識論と意志としての世界
意志への知性の関係/イデア論/力としてのイデア/イデアと現象の関係
第3節 ショーペンハウアーの体系におけるアプリオリ性の学説の基礎づけ
カントおよびカント以後の思弁へのショーペンハウアーの態度/ショーペンハウアーの認識論における循環/認識の超越論的基礎づけと生理学的基礎づけ/意志の産物としての認識/発達史的タイプの形而上学
第4節 認識問題と価値問題
「世界の救済プラン」における認識の位置/意志の否定としての認識/ペシミズムと幸福主義/快楽問題と価値問題
第七章 フリース
第1節 直接的認識の学説
哲学的思索の事実的基盤/証明という先入見/理性批判の方法/直接的認識/理性の自己信頼の原則/認識と対象の関係/理性批判の人間学的方法
第2節 フリースの哲学の方法
カントとフリースにおける演繹/超越論的出発点と人間学的出発点/理性の理論/帰納と思弁/判断形式からの形而上学的根本概念の導出/反省的認識の位置/直接的認識の物象化/人間学的方法と心理学主義/再意識することとしての意識/カントとフリースにおける判断の概念/形而上学的認識の暗さ
訳者あとがき
人名索引