みすず書房

書物から読書へ

PRATIQUE DE LA LECTURE

判型 四六判
頁数 384頁
定価 4,730円 (本体:4,300円)
ISBN 978-4-622-03353-0
Cコード C1022
発行日 1992年5月15日
備考 現在品切
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書物から読書へ

読書は日常を彩るささやかな創造の営みである。書物の返すこだまを自分自身の声として聴くよろこび。ひとは〈読む〉ことによって本に生命を吹き込む。——だが、この体験は語りうるだろうか。読書のあり方とは、時間や空間を選ばず、つまるところ読み手ひとりひとりの個性に還元されるものではないのか。
このようなイメージを「再審に付す」ため、十人あまりの読書家が南フランスの古い修道院に集った。本書は、そのたわわな成果である。社会学、文学史、批評そして歴史学……異なったジャンルに属する研究者たちが、読書という行為にあらゆる角度から照明をあてていく。こうしてひとつの問いかけを共有することによって、この凝縮した討議は、新しい文化史研究のはじまりを告げるものとなった。
読書は、時代の刻印を帯びた行為であり、行われ方次第で多様な意味をつくり出す。シャルチエは、従来アナール派の歴史学が築いてきた書物の社会史の意義を十分に認めつつ、文化的な財の所有の歴史から消費の歴史へと視点の転換をうながす。実際に
本はどのように読まれていたのか、人々は書物に何を求めたか。彪大な史料が新鮮な研究方法で見直されることによって、文書の流通と利用が、その時代の社会的結合を変容させる契機ともなったことが明らかになっていく。

目次

序言
読むこととその難しさについて
ヴァランタン・ジャムレ=デュヴァルはいかにして読むことを学んだか——独学の模範例
読みの諸相
書物から読書へ
意味生産行為としての読書
絵画を読む——プッサンの一通の手紙(1639年)をめぐって
平均的読者
ルソーを読む——十八世紀の「平均的」読者像
社会生活の中の文字文化——十八世紀フランスの都市の場合
書物とその魔術——十九・二十世紀におけるピレネー地方の読者たち
読書のポリティーク
読書——ひとつの文化的実践
論文執筆者
訳者あとがき