夜と霧【新版】 電子書籍あり
EIN PSYCHOLOGE ERLEBT DAS KONZENTRATIONSLAGER
判型 | 四六判 |
---|---|
頁数 | 184頁 |
定価 | 1,650円 (本体:1,500円) |
ISBN | 978-4-622-03970-9 |
Cコード | C0011 |
発行日 | 2002年11月5日 |
電子書籍配信開始日 | 2014年10月1日 |
EIN PSYCHOLOGE ERLEBT DAS KONZENTRATIONSLAGER
判型 | 四六判 |
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頁数 | 184頁 |
定価 | 1,650円 (本体:1,500円) |
ISBN | 978-4-622-03970-9 |
Cコード | C0011 |
発行日 | 2002年11月5日 |
電子書籍配信開始日 | 2014年10月1日 |
〈わたしたちは、おそらくこれまでのどの時代の人間も知らなかった「人間」を知った。では、この人間とはなにものか。人間とは、人間とはなにかをつねに決定する存在だ。人間とは、ガス室を発明した存在だ。しかし同時に、ガス室に入っても毅然として祈りのことばを口にする存在でもあるのだ〉
「言語を絶する感動」と評され、人間の偉大と悲惨をあますところなく描いた本書は、日本をはじめ世界的なロングセラーとして600万を超える読者に読みつがれ、現在にいたっている。原著の初版は1947年、日本語版の初版は1956年。その後著者は、1977年に新たに手を加えた改訂版を出版した。
世代を超えて読みつがれたいとの願いから生まれたこの新版は、原著1977年版にもとづき、新しく翻訳したものである。
私とは、私たちの住む社会とは、歴史とは、そして人間とは何か。20世紀を代表する作品を、ここに新たにお送りする。
心理学者、強制収容所を体験する
知られざる強制収容所/上からの選抜と下からの選抜/被収容者119104の報告——心理学的試み
第一段階 収容
アウシュヴィッツ駅/最初の選別/消毒/人に残されたもの——裸の存在/最初の反応/「鉄条網に走る」?
第二段階 収容所生活
感動の消滅(アパシー)/苦痛/愚弄という伴奏/被収容者の夢/飢え/性的なことがら/非情ということ/政治と宗教/降霊術/内面への逃避/もはやなにも残されていなくても/壕のなかの瞑想/灰色の朝のモノローグ/収容所の芸術/収容所のユーモア/刑務所の囚人への羨望/なにかを回避するという幸運/発疹チフス収容所に行く?/孤独への渇望/運命のたわむれ/遺言の暗記/脱走計画/いらだち/精神の自由/運命——賜物/暫定的存在を分析する/教育者スピノザ/生きる意味を問う/苦しむことはなにかをなしとげること/なにかが待つ/時機にかなった言葉/医師、魂を教導する/収容所監視者の心理
第三段階 収容所から解放されて
放免
『夜と霧』と私——旧版訳者のことば(霜山徳爾)
訳者あとがき
〈あの愚かしい太平洋戦争の絶望的な砲火硝煙の戦場体験を持つ者は、今や七十歳代の終りから私のように八十歳前半までの老残の人間のみである。どうしても骨っぽい、ごつごつした文体になってしまう。またそれはアウシュヴィッツの現場をみた者には避けられないことかもしれない。
それに対して、新訳者の平和な時代に生きてきた優しい心は、流麗な文章になるであろう。いわゆる“anstandig”な(これは色々なニュアンスがあって訳しにくいが「育ちのよい」とでもいうべきか)文字というものは良いものである。半世紀の間、次々と読者に愛された本書が、さらにまた読みつがれるように、心から一路平安を祈るものである。〉
(霜山徳爾「『夜と霧』と私——旧版訳者のことば」)
〈このたびも、日本語タイトルは先行訳に敬意を表して『夜と霧』を踏襲した。これは、夜陰に乗じ、霧にまぎれて人びとがいずこともなく連れ去られ、消え去った歴史的事実を表現する言い回しだ。しかし、フランクルの思いとはうらはらに、夜と霧はいまだ過去のものではない。相変わらず情報操作という「アメリカの夜」(人工的な夜を指す映画用語)が私たちの目をくらませようとしている今、私たちは目覚めていたい。夜と霧が私たちの身辺にたちこめることは拒否できるのだということを、忘れないでいたい。その一助となることを心から願い、先人への尊敬をこめて、本書を世に送る。〉
(池田香代子「訳者あとがき」)
著者ヴィクトール・フランクルの没後、フランクル財団が設立され、フランクル賞が創設されました。
(フランクル財団http://logotherapy.univie.ac.at/)
(2006年の大賞には、心療内科医の永田勝太郎氏(浜松医大付属病院)が選ばれ、さきごろ2008年3月にウィーンで記念講演がなされたことが新聞等で報じられています。永田氏は30代で仕事に思い詰めたときにふと、学生時代に読んだ『夜と霧』が頭に浮かび、手紙を書くと返事がきて、招かれたウィーンへとんでいったのだそうです。それから亡くなるまでの十数年、休みがとれるたび会いにいき薫陶を受けた永田氏は、専門が細分化され臓器や細胞さらにDNAを診るようになっていく現代の医療・医学の傾向に抗し、全人的医療を提唱されています。
フランクル『夜と霧』は、毎年のように夏休みの読書感想文コンクールの自由図書としても選ばれ、そこから年々すばらしい作品が生みだされています。高校生のかたたちにぜひ読みつぎ、読み広げていただきたいと、2007年来つづけて夏になると、『夜と霧』からの読書案内をご用意しています。