みすず書房

ユリシーズの涙

LES LARMES D’ULYSSE

判型 四六判
頁数 160頁
定価 2,530円 (本体:2,300円)
ISBN 978-4-622-04529-8
Cコード C0097
発行日 2000年12月8日
備考 現在品切
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ユリシーズの涙

『オデュッセイア』で愛犬アルゴスに涙した英雄ユリシーズ、その挿話にタイトルを得た本書は、著者が愛犬と過ごした日々の回想と、文学や歴史のなかの犬をめぐる思索とが絶妙にブレンドされた、四三の断章からなる素晴らしいエッセーだ。詩人カップルの人生を、コッカースパニエル犬の「嗅点」からみごとに描いた、ヴァージニア・ウルフの『フラッシュ』を鮮やかに論じ、老いた牝猫に飼い犬を挑発させて変態セックスに興ずるアンドレ・ジッドの姿をスケッチしてみせる。

パリの街角を散歩するグルニエと愛犬と親しかった作家ロマン・ギャリと女優ジーン・セバーグ夫妻、妻が事故死した年、この犬も先が長くないと知ったギャリはむせび泣く。そして、彼もまた…「犬とは、人間が、純粋な愛の支えとするために、あえて地上の被造物から選び出した動物なのである」とある女性作家はいう。人生を知りつくした短篇の名手による、愛犬家、厭犬家に向けた好著。