みすず書房

フォースター 老年について

大人の本棚

DE SENECTUTE AND THE PRINCE’S TALE

判型 四六判
頁数 232頁
定価 2,640円 (本体:2,400円)
ISBN 978-4-622-04828-2
Cコード C1398
発行日 2002年5月2日
備考 現在品切
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フォースター 老年について

20世紀は戦争の世紀であった。これはまた、9・11以後、21世紀になっても変わりなくつづきそうである。高齢者の人口がいやおうなく増え、戦争による死者もまた増えつづけるだろう。人間の死がこれまでになく、身近なものになるだろう。老年と死について考えざるをえない所以である。

「19世紀が死を大袈裟に扱いすぎたとすれば、今世紀はそっけなさすぎるのではないだろうか。どちらの姿勢も、人間としての基準をあやうくするものだ。では正しい悲しみ方をした者がいるかと言えば、ギリシア人がそうだった。ギリシア人は泣き、立ちなおり、追想した」。

「老年と年をとることを同一視するのもよくない。年をとるというのは気持ちの問題で、これは年齢とはほとんど無関係に襲ってくるものだ」。

20世紀を代表する名エッセーである「私の信条」をはじめ、「私の書斎で」「無名ということ」、本邦初訳の「大公の物語」など、13篇を収める。また、神韻漂う短編小説「コロノスからの道」と「天国行きの乗合馬車」の2篇をも併収する。どの作品も〈人生の叡智〉に充ちた、大人向けの一巻本アンソロジーである。

目次

老年について
私の信条
イギリス国民性覚え書き
ヴォルテールとフリードリッヒ大王
私の森
私の書斎で
ヴァージニア・ウルフ
カヴァフィス全詩集
ハワード・オヴァリン・スタージス
私、彼ら、みなさん
無名ということ
イギリスにおける自由
大公の物語
   *
コロノスからの道
天国行きの乗合馬車
E・M・フォースターについて(小野寺健)