みすず書房

主人公は老境にさしかかった元政治家。敗戦後の追放令に該当して、郷里に帰臥している。悠々自適の日々に英米の自叙伝を読み耽るうち、「私」も食指を動かされる。「独身社長独身代議士」と渾名された「私」にも、幾つかのロマンスがあった。青春から今日までの心の歴史があった。

郷里の中学を追われ、上京してミッション・スクールへ。従妹との初恋に破れ、蹶起してアメリカへ留学。帰国して大学教授から実業家へ転身——波瀾に富んだ生涯を顧みてつくづく思い知らされる銘は「人生愚挙多し」。因果はめぐり、そして老後になお最後の愚挙が待ち受ける……。

戦前から戦後にかけて、児童文学とユーモア小説の第一人者として広く親しまれた佐々木邦の名作『心の歴史』に、珠玉のエッセイ2篇を併録する。

目次

芭蕉の蛙
テーブル・スピーチ
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心の歴史

解説 外山滋比古