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ワーグナーと現代【新装版】

WAGNER UND UNSERE ZEIT

1908-1951


本書は、トーマス・マンがワーグナーについて書いた文章を年代順に編んだものである。

マンにとってワーグナーの存在は、その一生を通じての芸術的・精神的対決の相手だった。天才ワーグナーの魅力は、マンのトリスタン的情熱をいかにたぎらせたことか! しかし一方、ワーグナーの俗物性はマンにとって耐えがたい憎しみと疑惑を喚びおこした。このアンビバレンツ――無上の賛嘆と冷静な批判、魅力の深淵と知性の明晰、こうした対位法の展開はマンの心の中に芸術家の理解をさらに深めてゆく。
1939年アメリカの歴史家ヴィーレックは「ヒトラーとワーグナー」のテーマでナチズムの起源としてのワーグナーを説いた。マンは、この論文に応えて、「ワーグナー的世界とナチスの悪との間に存在する錯綜し苦渋にみちた相互間係」を認める。ドイツ精神は本質的に社会的政治的関心を欠いており、そしてドイツ的本能は、詩と原始と神話を求めずにはいない、とマンはいう。
もとより魔術師ワーグナーの創造はこの原始に根ざしている。「生命の本源の物体が互いに働きかけ、日は夜と対話し、人間の神話的原型たる、美しく快活な金髪の乙女たちと、憎悪と悲哀と反逆に沈む人びととが、深遠な妖精物語のなかで惹き合う。」この神話哲学・天地創造の官能的音楽詩劇が、現代のような政治的時代にあっては「実り豊かな欠陥」と化し、致命的で悲惨な性格を帯びる。それは「合理性が非合理作を動員する技術・手段・理論がファシズム」(E・H・カー)という言葉どおりナチの運動となる。

マンのワーグナーとヒトラーのワーグナー。「ワーグナー現象」の持つ多義性は、謎の国ドイツを解く鍵であり、また世紀の質的転換を鮮やかに照らし出す鏡でもある。



著訳者略歴

トーマス・マン
Thomas Mann

作家ハインリッヒ・マンの弟で、作家クラウス・マン、歴史家ゴロ・マンの父。 ...続きを読む »

※ここに掲載する略歴は本書刊行時のものです。
小塚敏夫
こづか・としお

1918年愛知県に生れる。1944年慶應義塾大学文学部独文科卒業。元東海女子大学数授。専攻 ドイツ文学。

※ここに掲載する略歴は本書刊行時のものです。

この本の関連書


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ワーグナーと現代【新装版】

「ワーグナーと現代【新装版】」の書籍情報:

四六判 タテ188mm×ヨコ128mm/280頁
定価 2,700円(本体2,500円)
ISBN 4-622-04986-4 C1098
2000年10月10日発行

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