みすず書房

「堆肥のにおいからふるさとを思い出した……このときの思い出は不思議な安らぎを心にもたらし、よいではないか、よいではないか、一人ぼっちでも何でも、それをあるがままに受容すれば、それでよいではないか、と何ものかにささやかれているような気分が起ってきた」。(「ねこ」)

自然科学者の手になる随筆の名品三つ——「かがみ再論」「一休禅師」「庭にくる鳥」——のほか、武蔵野点景、入院の楽しみと苦しみ、秀抜な「ホテル‐旅館‐銭湯考」、さらに学生時代や留学、師友を飾ることなく語った「思い出ばなし」など、軽妙洒脱な語り口による14篇を収める。

目次

 まえがき
随筆三題
 かがみ再論/一休禅師/庭にくる鳥
ある日のできごと
なまいき
ねこ
武蔵野に住んで
入院の楽しみ
入院の苦しみ
凡児さんとゴム風船
訪英旅行と女王さま
ホテル‐旅館‐銭湯考
 *
思い出ばなし
 *
鏡のなかの物理学