みすず書房

「イギリスには二人の偉大な人物がいて、彼らの国は次の二つをこの両人に負うている。すなわち、この国の思索する人たちの間に広められるに至った重要な思想の大部分のみならず、思索と研究との一般的方法にもたらされるに至った一大変革をも、この二人に負うている……この二人とは、ベンサムとコウルリッジ——すなわち、当代イギリスにおける胚芽的な精神の双璧——である。」(J. S. ミル)
本書は、哲学的急進派のベンサムと保守派のコウルリッジ、この偉大なる対立者の思想・方法を精細に検証し、両者を和解・統合させんとした壮大な試みである。功利主義の特長と限界、国家と個人の自由、文化と社会、キリスト教の存在意味、想像力の価値、持続と革新など、ミルはこの傑出した二人の巨人の精神世界に深く潜入し、その核心をきめ細かく追求してゆく。これら二論文は、リーヴィスが強調するごとく、たんにヴィクトリア朝イギリスの中心的思想の理解に欠くべからざるものであるだけでなく、ヴィクトリア朝文学の十分な理解にとっても、きわめて重要な意義をもつ古典なのである。さらに、革新と伝統を止揚させんとするミルの真摯な知的態度は今日的な意義をも十分にもっている。「ベンサムとコウルリッジを扱ったこれらのエッセーは、19世紀の知性史における最も注目すべき文書の一つである。最近、リーヴィス博士の刺激に富んだ序文を付して、これら二篇のエッセーが復刻されたことはまことに有益かつタイムリーな試みである。」(レイモンド・ウィリアムズ)

[1990年初版発行]

目次

序文……F. R. リーヴィス
ベンサム
コウルリッジ

訳注
訳者あとがき