みすず書房

マルクスの3人の娘のなかでエリノアだけが父の気持ちを継ぎ、勇敢で率直な社会主義の闘士へと成長した。夫のエイヴリングと非公式に結婚し、彼らを知る人々に衝撃を与えた。月並みのモラルを越えた行動は新しい演劇に格好なテーマを提供し、2人はその主唱者にもなった。また、ロンドン港湾労働者やガス労働者の運動に加わったりもした。しかし、夫として選んだこの男の品性が彼女のすべての希望を打ち砕いた。彼を極悪人とする人も多かった。運動家たちが社会主義のメッカであるエンゲルスのロンドン私邸に行かなくなったのは、彼がエイヴリングの後見役だったためであった。最後に、エイヴリングがその妻の非業な死の直接の原因だったことが判明した。

社会主義社会を震撼させたこの事件を、「ただごとでない、悲劇的な事件の性格と人間的な関心とのゆえに」著者は追究したのである。世界中に散在する資料を採訪し、初めてエリノア伝を完成した。まず英語で書かれてオックスフォード大学出版局から出版され、のち欧州各国語版がこれにつづいた。二度の劇化とBBCの放映も行われている。

[1984年初版発行]

目次

日本語版への序文
はしがき
省略記号について

1 革命の娘
2 ポリティケリン(女性政治家)の青春(その1)
3 ポリティケリンの青春(その2)
4 ドクター・エイヴリング
5 自由恋愛と社会主義
6 アメリカ遊説の旅——幕間劇
7 ミューズの微笑——演劇と人生
8 「万国の労働者よ、団結せよ!」(その1)
 ——新インターナショナルと新組合
9 「万国の労働者よ、団結せよ!」(その2)
 ——独立労働党とその周辺
10 マルクスの遺産
11 岐路に立つ社会民主主義
12 破局
13 エリノアの死——エピローグ

参考文献
索引