みすず書房

生命倫理をみつめて

医療社会学者の半世紀

CONVERSATION IN JAPAN

判型 四六判 タテ188mm×ヨコ128mm
頁数 232頁
定価 2,640円 (本体:2,400円)
ISBN 978-4-622-07017-7
Cコード C1036
発行日 2003年2月 3日
備考 現在品切
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生命倫理をみつめて

この半世紀のあいだ、医療の世界では何が起こってきたのか。医療に従事する者にとって、最も大切なことは何か。医学教育はどうあるべきか。医療社会学の可能性とは?
本書は、アメリカ社会における医療のさまざまな領域、とくに医師の養成過程や実験医療・先端医療を中心に、参与観察者としてみつめつづけ、数多くのすぐれた業績を生んできた医療社会学の第一人者、レネー・C・フォックスの「自伝的回想」とも言うべき書である。
医療の「不確実性」について、臓器置換をめぐるジュディス・スウェイジーとの共同研究の実際について、生命倫理学(バイオエシックス)について……とりわけ、1970年代はじめに成立した生命倫理学という分野にたいしては、著者は積極的に関与しながらも、そこに社会科学的な思考が欠落していることを指摘し、アウトサイダー的な重要な位置から問題提起をつづけている。同時に、若い頃からのベルギーやアフリカ・コンゴでのフィールドワーク、また1990年代以降は「国境なき医師団」の活動に参与観察者として加わりながら、現在も医療の現場にたずさわっている。

本書は、2001年春に東京医科歯科大学の招きで著者が来日したときに行なったインタヴューが基本になっている。巻末に付した来日時の講演「医療専門職における人間の条件」ともども、本書は一人の女性の半生を描いた感動の書であるとともに、医師・看護師はじめ医療関係者や人文社会科学の多くの分野の人にとっても必読の書になるだろう。解説・市野川容孝「レネー・C・フォックスと医療社会学の系譜」

目次

はじめに

第1章 社会学者への道
移民の子として/スミス・カレッジ入学前後/闘病のなかで/病いが癒えて/ハーヴァード大学に入る/「社会関係学科」と精神分析学/パーソンズとの出会い/「医療社会学」の発端——F第二病棟/F第二病棟にて/『危険な実験』

第2章 医療社会学者として——医療における不確実性
健康・病気・医療は人間社会の窓である/民族誌的調査方法をとる/医学生の社会化/医療における不確実性/距離を置いた関心を医学生にどう身につけさせるか

第3章 教師として、研究者として
教師としての役割が最も重要である/ベルギー、第二の拠点/なぜベルギーなのか/アフリカ、コンゴでの活動/ベルギーの館にて

第4章 臓器置換——移植
バーナード・カレッジを離れる/ふたたびハーヴァードにて/ジュディス・スウェイジーとの出会い/ジュディスとともに/二冊の共著/「失敗を恐れない勇気」/「生命の贈物」——贈与というテーマ/資源を平等に分配すること/『スペア・パーツ』という表題の意味/ペンシルヴァニア大学社会学教授と医学教育/社会学学科長として/教育者の生きがい/看護師教育

第5章 生命倫理学への関わり
生命倫理学は医学に関するものだけではない/「生命倫理学、ワシントンに行く」/「生命倫理学たたき」と呼ばれて/「医療道徳は生命倫理学ではない」/生命倫理学者の文化的な視野の狭さ/生命倫理学の社会学

第6章 国境なき世界へ
オックスフォードに招かれる/教えることと学ぶことのあいだ/大学を去る/「国境なき医師団」と「世界の医師団」/社会学者としての参与/ロシアとギリシアのケース/人道主義のディレンマ/おわりに

訳注
用語解説
本書で取り上げられた文献

付・医療専門職における人間の条件(細田満和子訳)

解説 レネー・C・フォックスと医療社会学の系譜(市野川容孝)
あとがき——本書の成立について(佐々木武)

「国境なき医師団」と「世界の医師団」

(第6章「国境なき世界へ」より)
「私が七十代になって熱中するようになった研究は、おそらくこれまで手がけたなかでいちばん野心的なものです。これをひらめきと言えば、傲慢で芝居がかった表現になってしまうでしょう。これまで自分のしてきたすべてのことを統合し、はっきりさせてくれるような解明的ビジョンを含んでいるわけではありません。むしろ、さらに多くの遠大な疑問を投げかけてくるものです。けれどもこの研究によって、これまで自分が手がけてきた研究のすべての要素が、私にとって最も重要な価値観やいくつかの最も強く根本的な信念といっしょになって一つにまとめられます。その意味で、これは統合であり総括なのです。
私が着手した研究は「国境なき医師団」(MSF Medicines Sans Frontieres)と「世界の医師団」(DOW Doctors of the World)という、二つの関連した来歴を持つ国際機関についての直接研究です。〔後略〕」