みすず書房

ストーリーを続けよう

ON WITH THE STORY

判型 四六判
頁数 330頁
定価 3,190円 (本体:2,900円)
ISBN 978-4-622-07030-6
Cコード C0097
発行日 2003年4月21日
備考 現在品切
オンラインで購入
ストーリーを続けよう

ジョン・バースと言えば、トマス・ピンチョンと並び、泣く子も黙る現代アメリカ文学の巨匠である。処女作『フローティング・オペラ』、名篇『旅路の果て』に始まり、『酔いどれ草の仲買人』、『キマイラ』、『レターズ』などなど、ボリュームたっぷりの傑作長編群は、世界文学の新しい地平をパワフルに切り開き、多くの読者を魅了してきた。

本書『ストーリーを続けよう』は、そんな〈長篇系のひと〉バースが久々に著した、待望の最新短篇集である。伝説の第1短篇集『びっくりハウスの迷子』より数えて、実に28年ぶりの短篇集刊行というから尋常でない。

もちろん、法螺と企みが大好きなジョン伯父さんのこと、今度の本も単純な短篇の寄せ集めであろう筈もない。「ハーパーズ」から「パリ・レヴュー」まで、錚々たる雑誌に発表、高い評価を受けた12の短篇それぞれの間に、幕間狂言的な掌篇を鏤めて、描かれるのは、バース夫妻を少なからずモデルに取ったと思われる、中/老年カップルたちの多様なスケッチ。時にしみじみと、時に哄笑を、時に手に汗握らせる、バース一流の語り=騙りに乗って、読者は小説の楽しみを満喫するに違いない。

それだけではない。バースはこの本において、初めての、実にトンでもない仕掛けを施したのだ。その仕掛けとは……

いや、その種明かしは、皆さんが本書を読んでのお楽しみとしておこう。名訳者、志村正雄氏による、知的興奮溢れる力作解説「叙述のマルチ・フラクタル」を併読すれば、面白さは更に倍増間違いなし! 冒頭のチャーミングな短篇「おわり——一つのイントロ」から驚倒の「カウントダウン——むかしむかし」による華麗なフィナーレまで、まさに満漢全席クラスのご満足を約束しよう。装丁は、あの『金曜日の本』のデザインでも絶賛を博した、玖保キリコ画伯、入魂の作である。