みすず書房

物理学者ランダウ

スターリン体制への叛逆

判型 四六判 タテ188mm×ヨコ128mm
頁数 352頁
定価 5,280円 (本体:4,800円)
ISBN 978-4-622-07119-8
Cコード C1042
発行日 2004年12月 8日
備考 現在品切
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物理学者ランダウ

20世紀ソ連科学界を代表する物理学者レフ・ランダウ(1908-68)の名は、世界的名著とされるリフシッツとの共著《理論物理学教程》により日本でもよく知られている。また、1962年、凍結した路面での輪禍により重体に陥り死の淵をさまよった彼が、国際的医師団の懸命の治療によって一命をとりとめるや、〈モスクワの奇蹟〉として全世界に報道され、その回復を鼓舞するかのように同年ノーベル賞が授けられたことは、いまも人々の記憶に残っている。

だが、この事故の四半世紀前にランダウが、ほぼ確実に抹殺されるはずだったもう一つの危機を生き延びてきたことを知る人は少ないだろう。1938年4月27日深夜、彼は内務人民委員部によって突如逮捕され、まる1年を獄窓に過ごさなければならなかったのである

本書は、ソ連崩壊にともなうグラスノスチによって解禁された、ランダウ逮捕に関するKGB(秘密警察)資料を中心に、関連論考を集成し、ランダウの科学思想と彼の知られざる政治的叛逆の事績を明らかにするものである。ランダウの物理学的天才について知っている読者も、本書から得られる情報に驚きを禁じえないであろう。

わが国論壇最硬派の数学史家、大佛次郎賞に輝く孤高の物理学史家、そしてバフチン、トロツキイを軸に権力と文化の関係に挑むロシア研究者、という異色トリオが編んだ稀有の歴史ドキュメントである。

目次

序文
総論解説 レフ・ダヴィドヴィチ・ランダウの科学思想とソヴェト政治  佐々木力

第I部 生の軌跡と学問
1 レフ・ダヴィドヴィチ・ランダウ(1908-68) E・M・リフシッツ
2 若き日のランダウ——コペンハーゲン時代の思い出 H・カシミール
3 ランダウをめぐる若干の回想 ユーリイ・B・ルーメル
4 物理学に志す学生へのランダウの率直な助言 E・M・リフシッツ
5 「研究は熱心にやればやるほどよい」
6 理論物理学のエンサイクロペディア M・I・カガーノフ

第II部 政治的抵抗の記録
7 レフ・ランダウの最高機密生活 ゲンナージイ・ゴレーリク
8 レフ・ランダウ——獄中の一年 カピーツァの書簡補遺
9 ランダウの戦後政治思想——1947-17年

訳者あとがき
ランダウをめぐって——個人的な回想  山本義隆
歴史を逆なでしたランダウ  桑野隆