みすず書房

未来者とは何か。「かつての老人たちの決まり文句に『ご先祖さまに申しわけない』という言いかたがあったが、いまこんなことを言うと若い世代は噴き出すだろう。しかし、万事を祖霊に聞くということは時間軸を過去に伸ばすということで、これを逆に未来に伸ばすとそこには未来者がいる。私たちは空間的に一人で生きているわけではないように、時間的にも一人で生きているわけではない。過去に死者たちがあり、未来に未来者たちがあることによって、現在の私たちがあることを、忘れてはならないだろう。」

生と死の感覚にすぐれ、日本文学史を果敢に書き直す仕事を進めつつある円熟の詩人は、新世紀に望んで何をどう考えたのか。経済、宗教、戦争、生命倫理、教育、言葉、人生……珍しく世の中の具体的な問題に即して新聞に書き継がれた59編の随想録。あとがきに代え、講演「童子と俳句」を収める。