みすず書房

「この私の第5エッセイ集『関与と観察』の特色は、第一に戦争に関するものを収めたことであり、第二に私が1963‐4年に書いた若書きが挿入されたことであり、第三は甲南大学在任中に職場から与えられたテーマについての文章を入れたことであり、第四は、長文の解説的書評を収めたことである。第五は、2003年秋から2004年の正月にかけて、親友を続けざまという感じでなくしたことがあって、その祭文あるいは追悼文を収めたことである」(「あとがき」より)

精神科医・中井久夫が、現代の混迷する状況をあざやかに腑分けし、世界と日本が陥ってしまった病巣、そのすべての源である「人類最大の災害」戦争に正面から向かい合った問題作。人はなぜ傷つけあい、血を流さなければならないのか。そのなかで粘り強く平和を希求し、それを実現していくような方法は、果たして存在しているのか。精神医学ばかりでなく、軍事関係それ自体にも深く切り込み、さらには文学、歴史学などあらゆる人文諸科学の叡智を結集して導き出された答えがここにある

目次

I
精神医学および犯罪学から見た戦争と平和
日本社会における外傷性ストレス——こころのケアセンター開所式講演
II
精神分裂病の名称変更
今にして戦争と平和
ポスト高齢化社会はどうなるのか
平成一四年を送る
イラク戦争開戦に思う
イラク戦争終了に思う
グローバリズムの果て
癌治療の場を垣間見る
中東で繰り返される日中戦争
日本の占領とイラクの占領
日露戦争を眺めなおす
二〇〇四年の歳末に思う
仕掛けられた憎悪の火種
日本人の“人間の条件”は
二〇〇五年九月一一日以後
III
現代社会に生きること
現代における生きがい
IV
日本の家族——その近代と前近代
生活空間と精神健康
V
土居健郎選集解説
霜山先生のお弟子さんたち
ロナルド・D・レイン『ひき裂かれた自己』
河音能平君の少年時代
村澤貞夫を送る 2004年1月7日
VI
須賀敦子さんの訳詩について
「その地」を訪れざる記
石川九楊『日本書史』を読む

あとがき
初出一覧