みすず書房

「私自身の生に関していえば、一回切りの生だからホンモノとして生き抜きたいという衝動がいつも起きるんです。そうすると、つまり思想史の人間の精神文化のなかで、ニセモノとホンモノとを振り分けながら、ホンモノから学ぶことによってできるだけ多く自分をホンモノにしていこうという努力がなされなければならないと私は思っているのです」

1998年完結の『藤田省三著作集』以来、その全体像に新たに息を吹き込む対談・座談のセレクション(全3巻)。第2巻の本書では、近代から同時代の思想・文芸をめぐって自在に繰り広げられる思索の足跡をたどった。対するは石牟礼道子、古在由重、佐多稲子、徐京植、萩原延壽、橋川文三、長谷川四郎、廣末保ほか。人間・藤田省三とともに、藤田式「近・現代史」が鮮明に浮かびあがる。解説・武藤武美。

目次

I
「思想史の再検討——人間的に生きるために」  廣末保
「大正時代の諸問題」  今井清一/倉塚平/西田勝/藤原彰/増島宏
「支配の構造」  萩原延壽
「福沢の思想のおもしろさ——『丁丑公論・痩我慢』の説をめぐって」  古在由重

II
「不覚の涙と自覚の涙——長谷川伸の世界を中心に」  佐藤忠男/戸井田道三
「映画の意味・うらおもて」  江藤文夫/戸井田道三
「吉本隆明の詩と現実」  江原順/宗左近/橋川文三
「花田清輝の創造と運動」  佐多稲子/長谷川四郎/針生一郎

III
「民衆のなかの〈天皇制〉」  北村久/廣末保
「文化と風土と人間」  石牟礼道子

IV
「見るべきほどのことは見つ——文化は活性化しうるか」  針生一郎
「来し方…」  廣末保
「戦後文化世代の最終走者として」  徐京植

解説・武藤武美