みすず書房

「その参照項の範囲の広さ——映画の歴史、芸術の歴史、マルクス主義の歴史——において、ゴダールの仕事はその人生と同じくらい私たちをひるませる。この本質的にほのめかしの多い、並はずれて豊かな仕事を十分に論評するのに必要な能力をすべて持ち合わせていると考えるのは、愚か者だけだろう。だが、人生に関してそうだったように、いくつかの特定のアングルを選び、ある特定の肖像を提供するという決断をすることで、企画を実現する見通しが立った。各章が提供するのは、そのようなアングルである」(「序」より)
ヌーヴェル・ヴァーグの寵児として映画史に生まれ落ち、半生紀をへた今日なお特異な映画作家でありつづける、ジャン=リュック・ゴダール(1930‐)。生きた伝説であるシネアストの生い立ちから現在までをたどる、初めての伝記だ。
スイスとフランス、二つの故郷を往復する幼年時代、盗みと逃走を繰り返す青年時代、そして、ある日、映画がゴダールをとらえた。
映画愛にあふれる人物たち——ラングロワ、バザン、トリュフォー、クタール、ゴランとの交流と、ゴダールを次なる段階へと導く回転扉となる女たち——カリーナ、ヴィアゼムスキー、ミエヴィルとの物語を、ゴダールのつぶさな観察者であり映画人でもある著者が、たんねんに描き出してゆく。それはまた、古典的アメリカ映画への熱狂から、68年における政治的なものの追究、実験的なテレビ作品の製作をへて、『映画史』に結実する映画的手法/文体の模索として生きられた、〈ゴダール〉という映画史でもある。
貴重な写真資料、詳細なフィルモグラフィーを収めた本格的なゴダール伝、待望の邦訳。

目次


第1章 神々と半神たち——モノー家とゴダール家
第2章 「映画館は悪い学校ではない」——アンドレ・バサンと『カイエ・デュ・シネマ』
第3章 フランス映画製作のある種の傾向——カリーナとクタールのヌーヴェル・ヴァーグ
第4章 学生革命——ヴィアゼムスキーとゴラン
第5章 隠れ家——アンヌ=マリ・ミエヴィルとロール


フィルモグラフィー

謝辞
訳者あとがき
図版クレジット
参考文献
索引

第1刷(2007年6月発行)お詫びと訂正

本書第1刷(2007年6月発行)につき正誤表(PDF)を作成いたしました。