みすず書房

「旅の終わりは/すかんぴん/まったくのすかんぴんがいい」
1953年、20歳を過ぎたばかりのニコラ・ブーヴィエは、ちっぽけなフィアットで旅に出た。ベオグラードで画家ティエリーと落ち合い、東へ東へと突き進む。ユーゴスラヴィア、マケドニア、イラン、アフガニスタン……。そこから一人でインド、セイロン。そこでの病と幻覚の日々を乗り越え1955年に横浜に入港、旅の終わりの日本はそのときブーヴィエの愛する国となった。
「われわれが体験する最高の時も最低の時も言葉にはならない」と言い、歩行と消尽によって自己を振り捨てようとしたブーヴィエ。後年になって血を流すようにして書かれた旅の著作から、極め付きのテクストを一巻に収めて、没後ますます評価の高まるこの作家、旅行家、図像調査士の魅力を伝えたい。なんて素敵な男なんだろう。

目次

ブーヴィエという生き方  (高橋啓)
メロンの香り(『世界の使い方』)
 ベオグラード
 バチェカ
 バチェカからパランカへ
アナトリアの道(『世界の使い方』)
 ギリシャとユーゴスラヴィア国境
 アレクサンドロポリス
 コンスタンチノープル
 アンカラの道
 スングルルの道
 スングルル
『かさご』
 税関吏
 インディゴ・ストリート
 かさご
 神父
 最後の呪術師
 キルケ
『日本クロニクル』
 横浜から東京へ
 荒木町界隈
『アラン島日記』
詩集『内と外』
 最後の税関

ニコラ・ブーヴィエ年譜