みすず書房

日本のアート・シーンに、いまなにが起こっているのか。
著者は精神科医として、思春期・青年期の精神病理と向き合ってきた経験をふまえ、ひきこもりからアニメ、文学、アウトサイダー・アートまで、現在進行形の文化現象に鋭く斬り込んできた。本書では、アートを通じて「リアルとは何か」を問いつづけるアーティストたちの、ユニークな創作衝動を抉り出す。
ベテランから若手まで、いまもっとも注目されている23人のアーティストへの、当意即妙のインタビューと、怜悧な作家論・作品論が響きあう。カラーも含めて作品写真をふんだんに盛り込んだ充実のビジュアル。展覧会では経験できない、肉声と批評のコラボレーション。アート・ブックの世界にあらたな事件を引きおこす、待望のクリティック集成。

目次

序論 ヒステリーに抗するアーティスト
草間彌生——象徴の去勢の象徴
できやよい——ロリータ・バロック・できやよい
加藤泉——正しきイマージュの系統発生
中ザワヒデキ——「顔」と「方法」
やなぎみわ——不在の「フェミニズム」
会田誠——ヒューモアとしての美少女論
小沢剛——背中から地蔵になっていくような幸福
木本圭子——エロスと運動のダイヤグラム
ミスター——ヤンキー・ロリコン・ミスター
小谷元彦——伸びる舌のレティサンス
ヤノベケンジ——廃墟に生きる子供のために
山口晃——ポストモダンの形式主義者
鴻池朋子——反復する「不時着」
村山留里子——透明なるアブジェクシオン
田中功起——形式のアイロニーから、ユーモアの形式へ
西尾康之——鏡像としての「死体」
杉本博司——写真の「もどき」
藤幡正樹——フレームとしての「アルゴリズム」
高嶺格——エイリアンによる歓待
八谷和彦——介入美術のアフォーダンス
岡田裕子——物語=関係は無限であることについて
タカノ綾——〈少女〉という透明な媒質
岡崎乾二郎——「非対称性」〈が/を〉もたらす「悟性」
掲載作品リスト
初出一覧

書評情報

鷲田清一
朝日新聞「折々のことば」2016年9月4日