みすず書房

小さな哲学史 電子書籍あり

ABREGES POUR LES AVEUGLES

判型 四六判 タテ188mm×ヨコ128mm
頁数 184頁
定価 3,080円 (本体:2,800円)
ISBN 978-4-622-07407-6
Cコード C1010
発行日 2008年7月15日
電子書籍配信開始日 2013年4月 1日
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小さな哲学史

アランの「哲学史」——といっても、均等な時間区分に従って哲学者とその思想を概説し、展覧したものではない。エッセイ風の哲学案内でもない。
古代ギリシャから、デカルト、スピノザ、ライプニッツ、ヒューム、カント…アランはそれぞれの哲学者たちから、ひとつの「精神」を抽出してみせる。それらは、みずからの宇宙を完結しているようでいて、つぎの精神へと扉をひらき、道をつける。おのおのの「精神」を珠として、一本の糸で貫いたような趣がある、不思議な、小さな書——。
圧巻は、その糸を留める要をなすオーギュスト・コント。現実のなかに身をおき、その支配をうける人間が堅牢で普遍の外的秩序を無視するとき、その知性はあてのない混迷に陥る——コントの実証哲学をつうじて、20世紀の形而上学的迷走を厳しく指弾する。

目次

タレスとイオニア学派
ピュタゴラス
エレア学派
ヘラクレイトス
エンペドクレス
アナクサゴラス
原子論者たち
ソフィストたち
ソクラテス
プラトン
アリストテレス
ディオゲネス
ストア派の人びと
エピクロス
キケロ
宗教哲学について
デカルト
懐疑/魂と物体の区別/神/情念
スピノザ
ライプニッツ
ヒューム
カント
オーギュスト・コント
諸学の体系/三段階の社会的法則/実証的精神/社会心理学/歴史哲学
社会学的道徳/家族/二つの権力/言語と文化/偉大なる存在/暦と祭式
訳者あとがき

編集者からひとこと

この本の原書のタイトルは『盲人のための哲学概論』。1943年に、パリの P.アルトマンから刊行されたものだが、もともと、これに先立つ1918年8月に点字出版されたのが始めだ。その経緯はよくわかっていない。ともあれ本書は、その原タイトルからあるいは想像されるような、「視覚に障害を持つ人びとが耳で聴く哲学史」あるいは「それぞれの哲学者の思想に〈視覚〉というテーマを求めたもの」ではない。
扱われている哲学者は、古代ギリシャから、突然飛んで、17世紀のデカルト、スピノザ、ライプニッツ。ついで18世紀のヒューム、カント。さいごに本全体の2分の1を費やして19世紀のオーギュスト・コントで締めくくられる。
エッセイ風の、耳からすんなり入って理解へみちびくようなものを意識して書かれたものではないが、ひとつひとつの章がごく短く、ひとりの哲学者からひとつの哲学のエッセンスを漉しとろうとするかのようなアランの筆致に、彼の『プロポ』を連想する人も少なくはないだろう。

いまから90年前、第一次大戦が終結しようとする1918年を「現在」として生きたアランは、その「現在」から遠く古代にまでさかのぼり、人間の知性と精神がつくりあげた宝をいまいちど見わたし、読者のかぎられる点字の出版物として、この書をまず世に送った。本書の構成が、一見、きわめてアンバランスな印象を読者にあたえながらも、全体をとおしてみると、とりわけオーギュスト・コントの読解にみられるように、知性の混迷に陥る現代人にたいする警告に収斂されてゆくように思えることの理由は、もしかすると、このあたりに隠されているのかもしれない。

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