みすず書房

源氏物語、〈あこがれ〉の輝き

判型 四六判
頁数 480頁
定価 5,940円 (本体:5,400円)
ISBN 978-4-622-07451-9
Cコード C0095
発行日 2009年1月26日
オンラインで購入
源氏物語、〈あこがれ〉の輝き

「天皇になれなかった皇子」をめぐる華麗な物語に、〈あこがれ〉をキーワードとして分け入ると、何が見えてくるだろうか。性愛的な思惑と政治的思惑のかけひきを骨格とするドラマのなかで、愛慕は実らず、あこがれは絶えず生み出されていく。紫式部は国の「政治をみごとに閨房に転移させた」書き手だった。
ノーマ・フィールドはまず何よりも、「小説の熱心な読者」だ。ヒロインたち一人一人に寄り添い、「ピンで貼り付けられた蝶さながら」の彼女たちと共に一喜一憂する。それを通して、『源氏物語』全体が逆に照射される。鋭利な物語分析の手法によって、「読み」と「分析」がみごとに融合された。読者はきっと、なぜこの物語がいまだに現役であり続けるのかに合点がいくだろう。
ロングセラー『天皇の逝く国で』の著者の第一作。

目次

まえがき
序論

第一章 三人の女主人公とヒーローの形成
二面性と身代わり——藤壺
背反、流謫、そして物語の展開
六条御息所——誇りと憑依
平安日本におけるとらえがたい自己
流謫における邂逅
都にて——都会の貴族としての明石の君

第二章 脇役のヒロイン、そしてヒーローの衰落
傍系の巻と脇役の女
高貴な流謫と養女
二条東院と春秋の争い
六条院——序曲
六条院の春
虚構と求愛
さまざまな撫子たち——近江の君と玉鬘
六条院の秋
玉鬘——盗まれた珠玉

第三章 すべての季節にかわる代役
ヒロインの命名
象徴的存在としての幼年期(少女時代)
理想化された平凡さとその崩壊
見ることは知ること
死の登場
英雄の孤独

第四章 都の彼方の女たち
宇治十帖以前の宇治
神秘、芳香、そして霊的生活——宇治の男たち
宇治の姉妹——長女の大君
実像と虚像のはざまで——中の君
代役の彼方へと漂って——浮舟

あとがき
日本語版へのあとがき

索引

関連リンク