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生きるための読み書き

発展途上国のリテラシー問題

著者
中村雄祐

「もし特定の文書に明確、着実な意味や機能があると感じるとしたら、その安定感は文書自体に内在しているのではなく、文書、それを使う諸人、両者を取り巻く社会状況の間の絶妙のバランスによって実現するものである。途上国における読み書きと生存の関係をより良きものにしていくためには、文書に関する制度や慣習、文書の生産流通にも目を向けた重層的なアプローチが必要である」(第8章より)

本書では、読み書きと生存の関係について、とりわけ途上国における「紙とペンの読み書き」の現状、そして今後の展望を考察する。
第I部〈現状編〉は、開発援助・国際協力における読み書き研究の概観を、リテラシーという切り口に沿って行う。
続く第II部〈理論編〉は、開発援助という枠を超えて、読み書きと生存の関係にかかわりを持つ諸研究を広く渉猟し、特に先進諸国における文書の使い方を考える。
第III部〈実践編〉では、著者自身が関わった南米ボリビア共和国のNGOにおける職業訓練プロジェクトを材料に、開発援助の現場での取り組みについて論じた。
三つのパートは相互に補い合う、切っても切れない関係となっている。そして、終章において、考察を整理し、ITの普及などさらなる課題を検討した。

最新の研究成果をふまえた、国際協力における理論と実践統合の試みであり、開発援助の新たな方向性を示す重要作である。開発援助・国際協力に関わる研究者、実務者、必携の書であると同時に、〈文書/読み書き〉という普遍的テーマでの啓蒙書となっている。


目次


第I部 読み書きと社会の発展

第1章 読み書き研究と国際協力
1.1 本書における読み書きの捉え方
1.2 読み書きに関する研究
1.3 開発とリテラシー
1.4 読み書きと生存
1.5 紙の消費と生存の圧迫

第2章 途上国の読み書き問題に対するリテラシー・アプローチ
2.1 開発研究におけるリテラシー
2.2 国際成人リテラシー調査
2.3 リテラシー・アプローチにおける文書への関心

第II部 文書と人間の歴史

第3章 文書とはどんな道具なのか
3.1 認知的人工物研究と途上国の読み書き問題
3.2 図的表現と世界
3.3 数の読み書き
3.4 声と図

第4章 紙の向こうの誰か
4.1 表情を読む、書面を読む
4.2 何を言うか、いかに言うか
4.3 書き言葉の伝統の乏しい言語と心の理論
4.4 図的表現と人々の心

第5章 現代世界における文書との付き合い方
5.1 「良い場所」に生まれる
5.2 近代化と文書の洪水
5.3 先進国における文書デザインとユーザー
5.4 ビジネス文書の読み書き
5.5 先進国企業における文書の役割
5.6 途上国における文書の質と量
5.7 文書の洪水にいかに対処するか

第III部 途上国の読み書き問題――ボリビアの編み物教室で考える

第6章 編み物プロジェクトの背景と成り立ち
6.1 ボリビアにおける貧困状況と読み書き
6.2 編み物プロジェクトの発端
6.3 文書管理エクササイズという落とし所
6.4 プロジェクトの対象に編み物を選んだ理由
6.5 文書管理エクササイズに向けた予備調査

第7章 文書管理エクササイズのメニュー
7.1 エクササイズと参加者
7.2 エクササイズの概要
7.3 エクササイズの全体見取り図

第8章 エクササイズの結果分析
8.1 全体的傾向
8.2 エクササイズの展開
8.3 プロジェクト終了後の編み物コース
8.4 プロジェクトをどう評価するか

終章
あとがき
文献表


著訳者略歴

中村雄祐
なかむら・ゆうすけ

1961年、福岡市生まれ。博士(学術、東京大学大学院総合文化研究科)。現在、東京大学大学院人文社会系研究科 文化資源学研究専攻准教授。主な研究領域:発展途上国の社会変化。 ...続きを読む »

※ここに掲載する略歴は本書刊行時のものです。

「自著を語る」 著者からひとこと

途上国の社会開発、中でも南米のNGOでの職業訓練プログラムの話、と聞くと「こりゃまたえらくマイナーな話題だな」と思われる方がほとんどだと思います。実際、本の後半、第III部で取り上げるのはそういう話です。 ...続きを読む »

書評情報

本村凌二(西洋史家)
<読売新聞 2009年11月22日>
狐崎知己(専修大学経済学部教授)
<月刊クロスロード 2009年12月号>

関連リンク

この本の関連書


「生きるための読み書き」の画像:

生きるための読み書き

「生きるための読み書き」の書籍情報:

A5判 タテ210mm×ヨコ148mm/272頁
定価 4,620円(本体4,200円)
ISBN 978-4-622-07458-8 C0036
2009年9月25日発行

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