みすず書房

パトゾフィー

PATHOSOPHIE

判型 A5判
頁数 592頁
定価 9,460円 (本体:8,600円)
ISBN 978-4-622-07511-0
Cコード C3011
発行日 2010年1月25日
備考 現在品切
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パトゾフィー

「共同体とは集団の中でパトス的に感受するものである。それは存在するもの、どこかにあるものではない。それはあらかじめ与えられた事実や実体ではない」。
「人間はパトス的人間学から見ると、そもそもの最初から不十分で、不完全で、補完を要し、変化しやすく、不確定で、できそこないで、無力であり、だからどのみち存在それ自身として永遠にではなく、時間的にその姿を現す」。
『ゲシュタルトクライス』などの名著によって精神医学に新たな地平を拓いた、ヴァイツゼカーのライフワークである。生命と環境の相互関係をパトス(受苦)の様相のうちに求める本書は、「パトスの知(パトゾフィー)」という主題をめぐって、自由連想的に考察を展開してゆく。
思考のカテゴリーは情念から導きだされる。論理的なものは非論理的なものから出てくる。現実化されるのは不可能なものである。論理によって言い表せる“もの”から、情念によってのみ捉えることのできる“こと”へ向けた、「病理学/パトス学」の構想。さらに「百科全書の試み」において、個人の病と社会の関係から、社会そのものが対象となるような病理学へ歩みを進める。壮大な〈医学的人間学〉の全貌が、ここに明かされる。

目次

第1部 存在とパトス
序章〔I〕
〔序章II〕
〔1〕 自然の魔性
〔2〕 客観[もの]の悪意
〔3〕 物質の妄想
〔4〕 運動の情念
〔5〕 人間的アプリオリについての補説
〔6〕 運動の情念(続き)
〔7〕 機能の無分別
〔8〕 物の不実
〔9〕 生命は嘘をつく

パトスの世界
〔10〕 新しい風景
〔11〕 交わり
〔12〕 パトス的カテゴリー
〔13〕 してよい
〔14〕 せねばならぬ
〔15〕 しようとする
〔16〕 すべきである
〔17〕 できる

第2部 病気論総論の構想
はじめに
はじめに——形態、機能、構造、精神における「ほかならぬここ」
〔18〕 1. 食と性
〔19〕 2. ノイローゼ、ビオーゼ、スクレローゼ
〔20〕 3. 解剖学的構築
〔21〕 4. 生理学的機能
〔22〕 5. 心的構造
〔23〕 ニュアンス
 〔1〕 強いと弱い
 〔2〕 粗大と繊細
 〔3〕 明瞭と不明瞭
 〔4〕 より多くとより少なく
〔24〕 「新しい世界像?」
〔25〕 ロゴファニーとエイドロギー——不可能性の定理
A. ロゴファニー
A) 因果性  B) 時間  C) 空間  D) 力  E) 数  F) 否定
B. エイドロギー
A) 感覚  B) 形/形式  C) 感覚内容  D) ゲシュタルト  E) 芸術作品
C. 不可能なものの実現

第3部 病気論各論の構想
〔26〕 病理学/パトス学各論
A) 呼吸  B) 栄養  C) 消化  D) 物質代謝  E) 循環  F) 神経器官
まとめ
〔27〕 生活史法
A. 診察
B. いわゆる生活史法
C. 生活史的なものの働き
D. 生活史のプロレプシス的構造
結果と限界

第4部 百科全書の試み
序論 体系への努力から百科全書の努力へ
〔28〕 1 人間学的形式からパトゾフィー的形式へ
〔29〕 2 芸術的表現と科学的表現
〔30〕 3 夢、想念、思考
〔31〕 死
〔32〕 死者崇拝
〔33〕 意味
〔34〕 可能性
〔35〕 痛み
〔36〕 めまい

めまい
〔37〕 意志
〔38〕 無気力
〔39〕 退屈、好奇心、食傷
〔40〕 性/セクシュアリティ
〔41〕 意識
〔42〕 現実[レアリテート]
〔43〕 医者と患者——信頼の問題
〔44〕 宗教——キリスト教的な医学は存在するか

キリスト教的な医学?
〔45〕 エス形成
思考の形成  随意運動  生命のある物体と生命のない物体との関係
〔46〕 自己知覚とゲシュタルトクライス

ゲシュタルトクライス
〔47〕 大きな力
喧嘩と妄想
喧嘩
喧嘩と闘争
妄想
妄想
〔48〕 国家
1. 国家と民主主義  2. 西と東  3. 戦争  4. 医療面
〔49〕 正義
〔50〕 支配力
〔51〕 うそ
〔52〕 結婚
〔53〕 男と女
〔54〕 同性愛
〔55〕 哲学との関係
〔56〕 宗教、政治、心理学、医学
〔57〕 人間の理論

訳者解説
訳者あとがき
人名索引
事項索引

書評情報

檜垣立哉(大学教授・哲学・生命論専攻)
週刊読書人2010年4月16日
十川幸司(精神分析/精神医学)
図書新聞2010年5月29日(土)

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