みすず書房

「アウトサイダーはインサイダーよりも早く客観的評価を下すことができる。当事者のわからないことが、離れた第三者によりよく、より早くわかるのは一般的である。この第三者というのが、実は、第四人称である。」

「作品、著作は著者があって生まれ、それを読む人があってはじめて存在する。読者のないものは、紙の上のインクのしみのようなものである。いかなる大詩人の書いたものであろうとも、第三者が読むまでは草稿で、原稿は作品ではなく、文書である」

プラトンはなぜその共和国から詩人を排除したのだろうか? また、アリストテレスはなぜ〈カタルシス〉論によって演劇を擁護しようとしたのか? 古今東西、多くの芝居に殺人とか心中といった反社会的な行為が現れるのはなぜだろうか? イギリスの役人で政治家のピープスは日記を暗号で書いたが、やがて解読されて大評判となり、その日記は古典となった。平文ではこうした人気は出なかっただろう。

本書は、〈のぞき見〉や〈立ち聞き〉といった、卑近な行為をキーワードにして、文化的伝統におけるアウトサイダーの意義、すなわち〈第四人称〉の存在とはたらきを明らかにしたものである。これはまた、〈外山学〉の核心ともいうべき、読者論・受け手論の一部をなす重要な書き下ろし論考=エッセイである。

目次

第四人称がある
興味の座標
コンテクストの意味
演劇
読者
伝記・書評
翻訳
書簡・日記
とき・ところ
歴史相対性
新聞
トラベラーズ・バリュー
異人(エトランゼ)
洞察
裁判

あとがき

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