みすず書房

「わたしのなかで、ツリーハウスの完成形がはっきりとイメージされているわけではない。それは曖昧だ。たえず揺れている。そのイメージの揺れ方をわたしは楽しんできた。ツリーハウスはどこへ行くのだろう。ただ、本体のクリの木の自然の形と矛盾しない、シンプルなデザインだけがわたしの求めているものだ。デザインは引き算である。作っているうちに欲が出て、複雑なデザインに変化する。そこから、どれだけシンプルな最初のイメージに戻すか。いや最初というよりも、ハウスという人を囲い込むだけの、土の家や草の家のような原型的なデザインに戻すか。ツリーハウスに居住性など、わたしは求めていない。木の上に、ぽっかり人間が浮かぶ遊びの空間があればいいのだ」
浅間山の山麓で週末の山小屋生活をつづけて四半世紀。村の少女たちや芸大生、フォークシンガーによる種々のコンサート、そしてジャムづくりや草刈り、「風のブランコ」「氷のオブジェ」など四季折々の「遊び」に、こんどは新たに草木染め、ツリーハウスづくりが加わった。さて、いかに樹木と遊ぶか? 自然に寄り添うデザインとは? 詩人がしなやかに綴った〈田舎暮らし〉の楽しみと日々。図版多数収録。

目次

浅間山の北の山麓で/木々の葉裏を見上げる/
夜道で怪鳥「花子」に出会う/怒涛のような夏が過ぎた/
田舎の日曜日/二代目「風のブランコ」の失敗/
粉雪のなかのハープと音楽療法/冬の狐の物語(以上、2007年)

十二歳の春/雨のなかのツリーハウス作り/
迷路をどう作るか/ジャムとシューベルト/
ギターの上の一匹の蛾/「高過庵」と柱立て/
ツタウルシの秋/晩秋の霧とキツネの足音(以上、2008年)

火山とエロス/山から遠く離れて/
父の終焉記/尖塔と出窓の魅力/
花の妖しさ、人形の妖しさ/大きなネズミたち/
スズメバチの襲撃/梯子をどう作るか/
ツリーハウスとパン焼き窯と/草木染めと竹と銅板と(以上、2009年)

大雪のなかで/墓を考える/
ムササビが来た!/クレッソンの春(以上、2010年)

書評情報

鎌田慧(ルポライター)
信濃毎日新聞2010年11月7日(日)
日本経済新聞
2010年12月19日(日)
東京新聞
2011年1月23日(日)

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