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歴史家の羅針盤

著者
山内昌之

かつて哲学者の三木清は、師の西田幾多郎には「本そのものに対する鋭い勘」があると語った。本書の著者にも、そうした勘があるのではないだろうか。
激動の三年間にわたり、新聞雑誌に発表され本書に収められた書評を時の流れに沿って読み返せば、世界に波及した経済危機や格差社会、大きく変わろうとしている国際関係、オバマ大統領を選んだアメリカ合衆国の本質、イスラーム社会の論じ方、日本の「政権交代」や議会のあり方など時々の問題が、書物という「半歩遅れ」のメディアと、それを評する著者の歴史家としての知性によって奥行きを備えてくる。
さらに、書評とは「優れた人の輝き」に接する喜びであると言われるように、いま何を読めば、人間への信頼を保ちながらものを考えて行けるかの指針も与えられる。
『幕末維新に学ぶ現在』の書き手ならではの選書評文もあれば、文学の悲しみへの感受性にも富む、最新の硬派レビュー集。


目次


 I
中年男の憂鬱な挑戦  松浦寿輝『半島』
孤独なリアリストの肖像  ハスラム『誠実という悪徳』
激動の時代を独特の感性で  藤村信『歴史の地殻変動を見すえて』
日本統治と「維新クーデタ」の実像を解剖  木村幹『高崇・閔妃』『民主化の韓国政治』
二十一世紀外交のあるべき姿  細谷雄一『外交』
イスラエル、アラブ首脳の人物像  ハレヴィ『モサド前長官の証言「暗闇に身をおいて」』
北朝鮮に有効なのは「無視」  重村智計『朝鮮半島「核」外交』
教養知にあふれた挑発  佐藤優『国家論』
イスラームに共感できる部分  ローレンス『コーラン』
中東の多面的理解のために  ダバシ『イラン、背反する民の歴史』
苦悩する天皇の悲劇  家近良樹『幕末の朝廷』
近代日本にとってのドイツ  工藤章/田嶋信雄編『日独関係史 1890-1945』
王室外交のあり方を考えさせる  君塚直隆『女王陛下の外交戦略』
国境の枠を越える問題をどうするか  遠藤乾編『グローバル・ガバナンスの最前線』『ヨーロッパ統合史』
韓国人の歴史認識を学ぶ  河宇鳳『朝鮮王朝時代の世界観と日本認識』
急拡大する非欧米系マネー  前田匡史『世界を動かすダイナミズム』
江戸探訪の伴侶として  深井雅海『江戸城』藤實久美子『江戸の武家名鑑』
イスラエル建国の源流  森まり子『シオニズムとアラブ』
島原の乱をめぐる叙事詩  飯嶋和一『出星前夜』
日本のイスラーム・中東研究の原点  大川周明『回教概論』
保守とリベラルの枠組みを越えて  飯山雅史『アメリカの宗教右派』
テーマで読み解く現代
歴史の本質にかかわる問い  モーム『アシェンデン』
謎の詩人の輪郭が現れる  石井洋二郎『ロートレアモン』
江戸ファンの大いなる楽しみ  稲垣史生編『武家編年事典』『江戸編年事典』

 II
西欧とイスラームとの未来  トッド『文明の接近』
イスラームの構造に内在的に迫る  池内恵『イスラーム世界の論じ方』
戦後の荒廃を立て直した経営者  湯谷昇羊『「できません」と云うな』
テロや戦争は若者人口増で起こる  ハインゾーン『自爆する若者たち』
悲しみをつぎ足した本  福永武彦『現代語訳日本書紀』
交易の中心にあった平和共存  塩野七生『ローマ亡き後の地中海世界』
日本にもあったテロと狂気の時代  野口武彦『幕末バトル・ロワイヤル』
志の高い外交とは  谷内正太郎『外交の戦略と志』
明治維新実現の立役者  町田明広『島津久光=幕末政治の焦点』
行動の美学を教える歴史  宮城谷昌光『他者が他者であること』
韓国近代化論による鋭い歴史批判  李榮薫『大韓民国の物語』
記者による政治家激励の書  田崎史郎『政治家失格』
乃木静子の「ほっとした覚悟」  司馬遼太郎『殉死』
健康と寿命の平等  ウィルキンソン『格差社会の衝撃』
戦没者慰霊とA級戦犯合祀  伊藤智永『奇をてらわず』
辻邦生とコルネリアの死
文学と経営の狭間で  辻井喬『叙情と闘争』
文学は孤島の営みではない  水村美苗『日本語で書くということ』
十字軍時代の立体的な理解  『イブン・ジュバイルの旅行記』
信頼のおける中東分析  脇祐三『中東激変』
トルコ「独立戦争」の錯綜するドラマ  オザクマン『トルコ狂乱』
経済政策を考えるために  八田達夫『ミクロ経済学II 効率化と格差是正』
ドイツ統一実現までの道筋  アッシュ『ヨーロッパに架ける橋』
9・11に渦巻いた思惑  ライト『倒壊する巨塔』
武士的なリアリズム  司馬遼太郎「日本人の二十世紀」
蚊帳に泣く  司馬遼太郎『坂の上の雲』
両陛下の温かな日常  渡邉允『天皇家の執事』
南朝の忠臣が秘めていた「皇統内革命」論  岡野友彦『北畠親房』
「かしやわ」と骸骨を乞うこと  松浦静山『甲子夜話』
誰からも恨みを買わなかった男  高杉良『挑戦 巨大外資』
自然科学者としての喜び  『天皇陛下 科学を語る』

 III
予測不可能な世界の未来  ラモ『不連続変化の時代』
人文主義者らの闊達な「統治」論  池上俊一監修『原典イタリア・ルネサンス人文主義』/甚野尚志『十二世紀ルネサンスの精神』
幕末に出現した船の運命  中村彰彦『軍艦「甲鉄」始末』
金融は人間を映し出す鏡  ファーガソン『マネーの進化史』
旧幕軍の敗因を死者たちの声で  野口武彦『鳥羽伏見の戦い』
苦悩する家老たち  中村彰彦『東に名臣あり』
政治家と知性との関わり  橋本五郎『範は歴史にあり』
政軍関係論と歴史の綾  小林道彦『政党内閣の崩壊と満州事変』
沈黙こそ人道に反する犯罪  パワー『集団人間破壊の時代』
変革期の開発経済論  坂野潤治/大野健一『明治維新1858-1881』
敗者たちの元気と開き直り
首相の現実感覚  上森亮『アイザイア・バーリン』
首相の理性と国民の感性  塩野七生『日本人へ 国家と歴史篇』
陸軍最後の戦闘、そのリーダーシップ  大野芳『8月17日、ソ連軍上陸す』
リーダーに必要なのは大きな戦略  葛西敬之『明日のリーダーのために』
通商によって描かれた世界史  バーンスタイン『華麗なる交易』
幸福の最大化、自由の尊重、美徳の促進  サンデル『これからの「正義」の話をしよう』
首相と参議院との注目すべき関係  竹中治堅『参議院とは何か1947-2010』
「場」で決まる政治的な意思  御厨貴『権力の館を歩く』
国際協力には志が必要  細野昭雄『南米チリをサケ輸出大国に変えた日本人たち』
狂気のなかでのムハンマド再発見  臼杵陽『大川周明』
常勝将軍・立見尚文  土屋新之助『立見大将伝』
砂漠の蜃気楼に浮かぶ夢  高杉良『バンダルの塔』

あとがき
初出一覧


著訳者略歴

山内昌之
やまうち・まさゆき

1947年札幌生まれ。北海道大学文学部卒業。現在、東京大学大学院総合文化研究科教授。学術博士(東京大学)。専攻は国際関係史とイスラーム地域研究。 ...続きを読む »

※ここに掲載する略歴は本書刊行時のものです。

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歴史家の羅針盤

「歴史家の羅針盤」の書籍情報:

四六判 タテ188mm×ヨコ128mm/272頁
定価 3,024円(本体2,800円)
ISBN 978-4-622-07568-4 C0020
2011年1月20日発行

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