みすず書房

復興の道なかばで 電子書籍あり

阪神淡路大震災一年の記録

判型 四六判
頁数 184頁
定価 1,760円 (本体:1,600円)
ISBN 978-4-622-07615-5
Cコード C0036
発行日 2011年5月10日
電子書籍配信開始日 2013年4月1日
備考 現在品切
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復興の道なかばで

〈あの震災から150日が経った。今神戸はふしぎなほど静かである。神戸を埋めつくしていた救援の人たちはおおむね去った。活動を続けているボランティアは地元の人たちか、敢えて残留した少数である…
会う人の多くは疲労をにじませている。震災以来働きつづけた人たちである。警察や消防や教員。一般行政の人もある。被災企業の人たちの再建の努力。渋滞の中で何度も夜を明かした運輸の人。求めに応じて無理を重ねた物資輸送に携わる人、報道の人もそうだ。自宅の修理に、店の、工場の再開のために夜間や休日を費やした人たちももちろんだ。休暇をとって欲も得もなく眠りたいという内心のささやきを感じている人が少なくなかろう。神戸全体がいっせいに休む休暇週間を提唱したいくらいだ。実際、われわれはよく働いたではないか。そういう自分をそっとほめてやりたいと思っても自然だろう〉(「震災後150日」)

誰もが被災地に眼をそそいでいた大震災から一年。避難所で生活していた人たちは、ボランティアはどうなったのだろう。被災中心部のように光が当てられなかった辺縁地域は、重荷を背負っていないだろうか。被災民への補償は、今後の地震対策は、町の復興は? こころに傷を負った人たちへのアプローチは、進んでいるのだろうか。
阪神淡路大震災から一年の記録を収めた『昨日のごとく』(1996年刊)より、中井久夫の文章9篇を中心に編集。
歴史に学ぶ・「神戸」から考える——こころのケアを中心に、精神科医が関与観察した震災後一年間の記録。

目次

復興の道なかばで  1995年2月‐1996年1月
精神科医の見た二都市  1995年2・3月
被災地内部から  1995年5月
震災後150日  1995年6月
災害下の精神科救急はいかに行われたか  1995年6月
半年がすぎて  1995年7月
阪神淡路大震災後8ヵ月目に入る  1995年9月
1995年10月・神戸
さいはての仮設住宅に  1995年12月
1996年1月・神戸

「こころのケアセンター」ロサンゼルス視察団に参加して

あとがき

緊急出版のお知らせ、本文抜粋PDFなど

このたび出版いたします中井久夫の二著『災害がほんとうに襲った時』『復興の道なかばで』は、阪神淡路大震災の記録『1995年1月・神戸——「阪神大震災」下の精神科医たち』(中井久夫編、95年3月)と『昨日のごとく——災厄の年の記録』(中井久夫他、96年4月)をそれぞれ元とし、編著者の精神科医・中井久夫による文章を再編集して、新稿も加え刊行するものです。刊行の契機は、ノンフィクションライター最相葉月氏によるこの記録への評価と行動でした。
最相氏は、救援活動にたずさわる医師や看護師、カウンセラーら病院関係者、後方支援の方々、さらにこれから支援を考えておられる方々にこの記録を届けようとの思いから、素早くサイトを立ち上げられ、「災害がほんとうに襲った時」はその最相氏のウェブサイトで閲覧できます。[追記 サイトは右記へ移転]http://lnet.la.coocan.jp/shin/shin00.html
また『復興の道なかばで』に収められる「1996年1月・神戸」の全文(PDF)は小社ウェブサイトで閲覧できます。
『復興の道なかばで』より抜粋「1996年1月・神戸」全文(PDF)ダウンロードはこちら
二冊はいっそう広い読者へお届けしたいと願い、電子版も発行いたします。
本書抜粋ほか緊急出版のお知らせリーフレット(PDF)ダウンロードはこちら

書評情報

宮地尚子(一橋大大学院教授)
北日本新聞2011年6月5日
佐藤由紀
毎日新聞2011年5月24日
秋田さきがけ新聞
2011年6月25日
赤旗
2011年7月17日
婦人公論
2011年9月7日号
渡邊十絲子
婦人公論2011年12月22日・1月7日号