みすず書房

「20世紀後半に「心から脳へ」と動いた振り子は、いつかまた反対に動くだろうか。いや、反対に動くだけでなく、両者の距離がもっと近くなり、それが臨床に生かされることを望みたい」

薬物療法研究と生物学的研究が進み、精神医学がより「部分の科学」となった今こそ、患者という人間とその人生全体をとらえる「全体の科学」が必要とされているのではないだろうか。
20世紀の心理学的精神医学の功績、統合失調症患者の社会性や長期経過をめぐる考察ほか12篇に、診察室での「全体の科学」の実践を記した書き下ろし論考を加え、あらためて心の専門家のあるべき姿を考える。
あくまで「症状」でなく「患者」を見つめた60年。精神科医・笠原嘉が探究しつづけた人間学を、この一書に凝縮する。

目次

まえがき
「全体の科学」のために(1984)
内因性精神病の発病に直接先駆する「心的要因」について(1967)
精神医学における人間学の方法(1968)
精神病理学の役割(1987)
反精神医学(1980)
分裂病患者にとっての「社会性」(1994)
心理学的精神医学の提唱(1999)
精神病理学と人間研究——学会名に「精神療法」の復活を祝して——(2007)
心理・社会・脳——精神科診察室で考える——(2007)
原点としての精神病院(1998)
初老期に入った分裂病者について(1983)
だから精神科医はやめられない!(2008)
精神医学における内因性概念について今一度——そして薬物療法と小精神療法の併用の勧めも——(2013)
解題

書評情報

牛島定信(三田精神療法研究所)
精神療法2014年2月

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