ルチア・ジョイスを求めて
ジョイス文学の背景
判型 | 四六判 |
---|---|
頁数 | 264頁 |
定価 | 4,180円 (本体:3,800円) |
ISBN | 978-4-622-07637-7 |
Cコード | C0098 |
発行日 | 2011年7月20日 |
判型 | 四六判 |
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頁数 | 264頁 |
定価 | 4,180円 (本体:3,800円) |
ISBN | 978-4-622-07637-7 |
Cコード | C0098 |
発行日 | 2011年7月20日 |
「ルチアのことが気になるのは、俗に〈紙一重〉と言われる天才と狂気の、一方の天才ジョイスの陰にあって重い心の病気を病んだ娘への同情とも憐憫ともつかぬ感情が久しくあるからである。しかしそれだけではない。この天才と狂気のはざまからジョイス作品の性格が見え、娘が病んだ統合失調症という病気の視点から、時代の相が見えてくることがあるからである。ルチアの人間像が父親の人生のみならずその芸術を照らし、現代文明の側面に改めて目を向けさせることがありうるからである」
マリー・ローランサンによる幻の〈ルチア像〉を求めて、アメリカ・バッファロー大学の「ジョイス・コレクション」を訪ねるところからこの探索行は始まる。まずはルチアの、マーガレット・モリス校でのバレエの修業と挫折、ベケットとの一方的な恋、そして精神的な病いへ。音楽と絵画、バレエ・リュスとの関わりを経て、父親は最後にルチアに装飾文字の創造を勧める。ここから、ジョイスがいつも持っていたという『ケルズの書』を中心に、父と娘の愛と相克の物語が展開してゆく。ルチアの装飾文字とジョイスの『フィネガンズ・ウェイク』のテーマが深いところで通底するという考察はじつにスリリングである。やがて繊細・華麗な装飾文字の創造に至るルチアの生涯を辿りつつ、広く現代文学=美術の問題を多面的に探究している。
1 ルチア・ジョイス
誕生・成長期——パリ生活——病気の進行——病気と生い立ちの背景——装飾大文字
2 バッファロー大学の「ジョイス・コレクション」
3 ルチア・ジョイスの肖像画
ジョイス一族の肖像画——ローランサンによるルチアの肖像画——肖像画探し——幻の肖像画
4 “リズムと色彩”
マーガレット・モリス校——画家ジョン・ダンカン・ファーガソン——“リズム”——雑誌「カイエ リズムと色彩」
5 音楽と絵画
カンディンスキー——クレー
6 ジョイスの作品と音楽
歌——演奏法的な技法、響き、ライトモチーフ——ポリフォニー
7 ルチアと音楽、そしてバレエ・リュス
8 ルチアの絵
絵の修業——装飾頭字の制作
9 ジョイスの作品と『ケルズの書』
『ケルズの書』——『ユリシーズ』——『フィネガンズ・ウェイク』
10 ルチアの装飾文字と『ケルズの書』
『一個一ペニーのりんご』——『ミック、ニック、マギーたちのマイム』——『チョーサー A・B・C』
11 ファーガソンのケルト的デザイン
12 終章
注
参考文献
あとがき