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老化の進化論<品切>

小さなメトセラが寿命観を変える

THE LONG TOMORROW

How Advances in Evolutionary Biology Can Help Us Postpone Aging


生物はなぜ老いるのか、なぜ寿命があるのか? 老化を「徐々にせり上がってくる死の壁」と捉える従来の寿命観は、「まったくの間違いだった」と著者は言い切る。
古来より人間は老化や寿命のコントロールをさまざまな手法で試み、失敗を繰り返してきた。しかし著者らは老化のHowより先にWhyを問う斬新な趣向でメトセラバエ(長寿のハエ)の作成に成功し、老化や死亡率の傾斜を生みだす「自然選択の力」をみごとに科学の俎上に乗せた。このメトセラバエを用いて老化の進化論が検証される過程を、本書はスリリングにたどる。
その過程は同時に著者の研究人生そのものだ。旧世代の巨星であるメイナード・スミスに憧れて研究室の面接を受けた大学院生が、大学教授へ、さらにバイオベンチャー設立へと、バイ・ドール法前後にまたがって歩んだキャリアがあけすけに語られ、回想録としてもとびきりのおもしろさ。
他方、本書で老化研究の大規模プロジェクト化がマンハッタン計画に躊躇なく喩えられていることには、衝撃を受ける読者も少なくないだろう。しかも研究の医学的な応用に利害関係をもつ研究者が、可能性に向かって開かれた姿勢と危ういオプティミズムの交錯する領域に踏み込んでいる──私たちの誰一人として、現代の生物学研究のこうした側面がもたらすものと無縁ではいられそうにない。


目次


推薦の辞
はじめに

1 スフィンクスとラビ
ヒトの寿命を延ばすべきか。この倫理的・哲学的な問いをめぐっては、生物学者の意見も神学者の意見も定まっていない。一方、寿命や老化の科学に関しては、以前なら答えの出なかった問題にも進化生物学にもとづく答えが出ている。

2 メイナード・スミスのシャツ
理論生物学者メイナード・スミスに憧れた大学院生のぼくの選択肢は二つ。メイナード・スミスのいるサセックス大学からは気乗りのしない老化研究を勧められ、ルウォンティンのいるハーヴァード大学は社会生物学論争のまっただ中。

3 セル・ギャング
老化研究の歴史は、失敗の歴史だ──メチニコフの細菌原因説、体細胞突然変異説、エラー・カタストロフィー説、カレルの細胞培養にはじまる細胞分裂の謎、そしてヘイフリック限界の発見。いずれも、老化の解明には至っていない。

4 力(フォース)
「自然選択の力」と加齢の関係については、ホールデン、メダワー、G・C・ウィリアムズといった異才たちが研究の端緒をつけ、ビル・ハミルトンがさらに現代的な分析への道を拓いていた。ぼくの進むべき方向は決まった。

5 グーン・ショーのアインシュタイン
学生運動の喧騒をよそに、ぼくは老化研究にとりかかる。ねらいは、くせ者の指導教官チャールズワースの「老化のゴミバケツ説」とでもいうべきアイデアの検証。何千時間という労苦の挙句、得られたのは予想外の結果だった。

6 小さいメトセラたち
家族を突然の悲劇が襲ったあと、科学研究に没頭したぼくはブレイクスルーへの手がかりを引き当てる。長寿のショウジョウバエの集団をつくりだす実験の成功は、同時にハミルトンとチャールズワースの理論の勝利でもあった。

7 郵便配達はふたたびベルを鳴らす
メトセラ実験を仕上げてポスドクとなったぼくは、シューアル・ライトのいるウィスコンシン大学でジム・クロウという理想的な指導者を得る。研究者としては順風満帆な出発。だがその代償のように、私生活には大きな破局が訪れる。

8 チェシャ猫のようなコスト
長寿と生殖の活発さの間にはトレードオフがあるらしい。長寿の生物は環境が多少変わっても長寿なのに、若齢期の生殖能力のほうは環境条件に左右されるので、このトレードオフの関係は現れたり消えたりして捕らえにくい。

9 鳥とミツバチ
なぜ、オウムやカメは長生きなのだろう? 体の大小、空を飛ぶか、子沢山かなど、さまざまな形質と寿命の関連とは? 同じ種のオスとメスの違いや、女王バチと働きバチの違いも、自然選択の力との関連で考えてみる。

10 死を招く偶然
ストレス耐性と寿命はどう関連しているのか。両者に明らかな関連がありそうだと気づいたのは、ひょんな偶然からだった。老化をコントロールする進化の論理と、代謝をはじめとする生理機能との関連を探る。

11 金儲け欲と痩せ願望にはきりがない
栄養、進化、老化。この三者がどうつながるかは、ショウジョウバエを使った実験ならば明快にテストすることができる。ヒトについても、食餌制限と長寿の関係を示すいくつかの歴史的事例から、食餌療法の効能と限界が見えてくる。

12 多頭の怪物
老化は複数のプロセスが同期して起こる「多頭の」怪物だと考えられてきた。信頼する同僚の新説に心底驚いたぼくは、この怪物の頭の数の推定を試みた。老化に関わる遺伝子の数は、実験動物ではすでにかなりの精度でわかっている。

13 ウディ・アレンとスーパーマン
意外にも、老化は止まる、あるいは「停滞」するように見える。これについては人口統計学的な解釈もあるが、進化論はより優れた説明を与えてくれる。老化を果てしなく高くせり上がる死の壁とみなす従来の寿命観は間違いだった。

14 オッペンハイマーですら
メトセラバエの研究は世間的な注目を集め、医学的応用をせっつかれることになる。そこから、バイオベンチャー設立を含む報われない試みが続いた。医療化の実現のために不足しているのは、テクノロジーではなくビジョンだろう。

15 長い明日
寿命を延ばすには、老化が調節されている仕組みを理解すべきだとかつては考えられていた。だが老化の進化論を理解する者は、老化とは真の意味では調節されていないものだと知っている。医学的な探究はそこから出発すべきなのだ。

16 渡し守の舟で
あまり一般的とはいえないかたちで老化と付き合ってきた研究者の、老化と死についての個人的な省察──先入観、不安、納得、ささやかな希望。

謝辞および情報開示
訳者あとがき
用語解説
参考文献についてのエッセイ
索引


著訳者略歴

マイケル・R・ローズ
Michael R. Rose

カリフォルニア大学アーヴァイン校スクール・オブ・バイオロジカルサイエンス、生態学・進化生物学部門教授。NERE(Network for Experimental Research on Evolution)ディレクター。 ...続きを読む »

※ここに掲載する略歴は本書刊行時のものです。
熊井ひろ美
くまい・ひろみ

翻訳者。 ...続きを読む »

※ここに掲載する略歴は本書刊行時のものです。

書評情報

出久根達郎(作家)
<朝日新聞 2012年6月24日(日)>
<日経サイエンス 2012年8月号>
東嶋和子(科学ジャーナリスト)
<北海道新聞 2012年7月15日(日)>
池谷裕二(脳研究者)
<読売新聞 2012年8月12日(日)>
<信濃毎日新聞 2012年7月15日>

関連リンク

この本の関連書


「老化の進化論」の画像:

老化の進化論

「老化の進化論」の書籍情報:

四六判 タテ188mm×ヨコ128mm/280頁
定価 3,300円(本体3,000円)
ISBN 978-4-622-07675-9 C0045
2012年4月20日発行
<ただいま品切です>