小石、地球の来歴を語る
THE PLANET IN A PEBBLE

判型 | 四六判 |
---|---|
頁数 | 268頁 |
定価 | 3,300円 (本体:3,000円) |
ISBN | 978-4-622-07683-4 |
Cコード | C1040 |
発行日 | 2012年5月18日 |
備考 | 在庫僅少 |

THE PLANET IN A PEBBLE
判型 | 四六判 |
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頁数 | 268頁 |
定価 | 3,300円 (本体:3,000円) |
ISBN | 978-4-622-07683-4 |
Cコード | C1040 |
発行日 | 2012年5月18日 |
備考 | 在庫僅少 |
文字通り“一個の小石に宇宙を見る”科学読み物の珠玉作。小石に閉じ込められた元素、鉱物、化石の来歴を調べ上げ、地球全史をエレガントに描きだす。先端技術がもたらすあらゆる原子時計や顕微画像を駆使して、宇宙や地球の誕生、古代の大陸や海の出現、それに続いて地球で起きた数々の事象が、つぶさに再現される。
著者の専門とも関連の深い、小石の「泥の時代」の記述(4‐9章)がまず見事だ。「筆石」「アクリターク」「キチノゾア」といった微化石が、いまとなっては謎そのものである太古の生物たちの繁栄を物語る。シルル紀の酸素に乏しい海底の生態系は、目を見張るようなデザインと多様性に満ち、小石のなかの痕跡をもとに描かれた光景であることを忘れそうになるほどだ。
10‐12章は小石が「岩石」だった時代。小石の中のさまざまな鉱物のディテールから、四次元の複雑さをもつ地下世界の環境、そして大陸の移動や山脈の形成といった壮大なイベントが見えてくる。
研究者たちが小石を扱う繊細な手つきに込めた情熱と興奮が、本書の細部にきらめきを与えている。冒頭で著者が現代の海岸から拾い上げる「わたしたちの小石」が、ついには想像を超えた彼方まで旅するので、どうかみなさん最後までお見逃しなく。
プロローグ
1 スターダスト —星くず—
在庫表/旅の始まり
2 地球の深部から
衝突/深部で/上昇/新大陸
3 遠い世界
たくさんの世界/水晶の物語/希少鉱物の物語/タイムマシーン/泥の誕生
4 待ち合わせの場所へ
自然の力/深海へ/炭素の源
5 海
死の海域——酸欠海域/遠くの氷/過去へ戻る
6 幽霊を見る
顕微鏡で/家をつくる者/時間をとらえる者
7 幽霊の不在
やわらかな者たち/化学物質からのメッセージ
8 地球のどこに?
磁石の記憶/動物たちの公差/野原を歩けば
9 金!
微生物と金属がつくる「金」/一線を越える/見えないメタン
10 オイルウィンドウ
レアアース/油田地帯/時間、そして時間
11 山を造る
スレートを作るもの/輸出入/時間の影で
12 地面から顔を出す
岩石の配管工事/ハイファイではない/家路につく/光のなかへ
13 たくさんの未来たち
ばらばらになる
エピローグ
読書案内
謝辞
訳者あとがき
参考文献
索引
口絵カラー写真説明
海岸や河原の小石のルーツといえば、小学校の理科の時間に習ったことを覚えている人も多いだろうか。川から海へ、海底から地中へ、そこから隆起によって山の頂上へ、そして川を下り、ふたたび河原へ……。新刊の『小石、地球の来歴を語る』は、そんな通り一遍のイメージの背後に隠れているめくるめく異世界へと、深く深く潜っていく本である。奇奇怪怪な太古のプランクトンたちに出逢い、メタン・ハイドレートゾーンの傍らやオイルウィンドウの中を通過しながら、地下の高密度空間における鉱物の変化を白昼夢のように眺め、あるいは雲母の粒や石英の結晶の超ミクロ構造にクローズアップして、大陸の移動や造山運動の生みだすとてつもない圧力を発見する……そんなディープな旅なのだ。
この小さな本に収まっているのが不思議なほど、壮大な地球の営みが躍如として描かれている。いったいどれだけたくさんの研究者たちの、どれだけの時間とエネルギーを費やしてこの精細な歴史が紡ぎ上げられたのだろう。本書の献辞は「ウェールズのスレート〔粘板岩〕の謎を追い求める同僚たち」に贈られている。「この本が語る物語は、もとより、彼らのものだ」。同時にこの物語は、鉱物や岩石や化石をタイムカプセルとして探求している世界中の研究者たちのものでもあるのだろう。
本書には、彼ら研究者が部屋じゅうに転がる石や鉱物と日々どんなふうに格闘しているかを窺わせる記述がときどき出てくる。〔下線の部分は著者による強調。本のなかでは傍点〕
どうやらウェールズの小石の葉理からシルル紀の年間カレンダーをつくることはできなかったらしい。でも、こうした試みが成功したときには他では味わえない恍惚の瞬間になることも、なるほどうなずける気がする。過去と現在の無数の研究者が人知れず行なってきたこうした試行錯誤の成果のひとつひとつが積み重なって、ついにはこの本で著者が小石に語らせているような壮大な歴史のパノラマが見えてきたのだ……。三嘆。