みすず書房

そこに僕らは居合わせた

語り伝える、ナチス・ドイツ下の記憶

ICH WAR DABEI

判型 四六判
頁数 248頁
定価 2,750円 (本体:2,500円)
ISBN 978-4-622-07700-8
Cコード C0097
発行日 2012年7月17日
備考 現在品切
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そこに僕らは居合わせた

《「おばあちゃんがお手本にしてる人っている?」
「昔はたくさんお手本にしたい人がいたわ。……思っていたような人と違ってがっかりさせられたこともあるわね。最初のお手本はもちろん両親よ。そして、十歳になってすぐ少女団にはいると、アドルフ・ヒトラーがお手本になったの」
「ヒトラー? ヒトラーって大悪人でしょ? なぜヒトラーなの!?」
「子どもたちは、ヒトラーはドイツで一番えらい人だと教えられていたの。戦争が終わる数日前に、ラジオでヒトラーが死んだと聞いたとき、私は悲しくて泣いたわ。ヒトラーのいない世の中も、ヒトラーなしの人生も想像できなかった……」》

大戦下、ナチスの思想は都市・農村をとわず組織的に国中に浸透し、〈世界に冠たるドイツ〉の理想は少年少女をも熱狂させた。祖国の正義と勝利を疑わず、加害者でも被害者でもなく、しかし時代の狂気に翻弄され……
17歳で終戦を迎えた著者は、「軍国少女」から、戦後は価値の180度の転換を迫られた世代。「この時代の証言者はまもなくいなくなる。だからこそ、真実を若い人に語り伝えなければならないのです」——自らの体験や実際に見聞きしたエピソードから生まれた20の物語。

目次

1 スープはまだ温かかった
2 潔白証明書
3 九月の晴れた日
4 賢母十字勲章
5 十一月のある朝
6 追い込み猟
7 おとぎ話の時間
8 スカーフ
9 ランマー
10 会話
11 価値ある人とそうでない人
12 すっかり忘れていた
13 人形のルイーゼ
14 アメリカからの客
15 どこにでもある村
16 それには勇気がいる
17 守護天使
18 沈黙の家
19 お手本
20 輝かしき栄誉

あとがき
忘れないための物語

書評情報

朝日新聞
2012年9月30日(日)
池田香代子(ドイツ文学翻訳家)
北海道新聞2012年9月23日(日)
石井正人(千葉大学教授)
しんぶん赤旗2012年9月2日(日)
ふえみん
2012年10月5日号
出版ニュース
2012年10月上旬号
冨山純子(日本子どもの本研究会)
しんぶん赤旗2012年11月24日(土)

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