「みすず書房」ページ内リンク

  1. 「メインメニュー」へ移動
  2. 「みすず書房の本の検索メニュー」へ移動
  3. 「本文」へ移動
  4. 「サイト利用ガイド」へ移動



生殖技術

不妊治療と再生医療は社会に何をもたらすか


日本で生殖補助医療により生まれる子どもは約2万人、1年間に生まれる子どものおよそ2パーセントをしめる。生殖技術がもたらした最大の変化は、卵子を女性の身体から切り離したことだ。技術の進展は、第三者から提供された精子・卵子による受精や、代理出産を可能にした。
さらに事態を大きく変えたのは、受精卵が研究材料として注目されたことだ。21世紀の医療として期待される再生医療の研究には受精卵が必要なため、不妊治療の過程で生じた受精卵が研究に使われる道筋がつけられた。
技術は今までできなかったことを可能にし、私たちに新たな選択肢を突きつける。生殖技術は、社会に何をもたらしたのか。
体内から取り出された精子や卵子の売買は何を意味するか。代理出産の報酬は何に対して支払われるのか。治療や研究のための卵子提供は無償か有償か。その根拠は何か。不妊の問題の解決策は医療のみなのか。再生医療に人は何を期待するのか。技術がもたらした問題は技術だけにとどまるものではない。技術とは、社会の問題なのだ。
技術の方向性を定めるのは社会だ。ならば、どんな技術を求めるかは、私たちが考えて決めていけるはずだ。子どもがほしいという願いが医療や国家プロジェクトへと連なる道筋を丹念に描き、生殖技術の構造を照らし出す、はじめての書物。


目次


はじめに
体外に存在する卵子/人体実験、情報と自己決定/ささやかな欲望を開拓する市場/自己身体からの疎外/マイノリティであることの困難

第一章 卵子・胚・胎児の資源化――何が起きようとしているのか
個人的体験/体外受精が拓いた材料化・資源化/卵子・受精卵の使い途/死亡胎児は廃棄物か資源か/インフォームド・コンセントの重要性と限界/材料化・資源化がもたらす不安

第二章 生殖技術と商品化――精子・卵子の売買、代理出産をめぐって
第三者が関わる生殖技術の現状/何を規制するのか、なぜ規制するのか/「身体の商品化」再考/グローバル市場で取引される精子と卵子/精子や卵子の授受についての考え方の違い/労働に対する報酬という言説/トラブル防止の仕掛け/利他的行為への評価と自尊心

第三章 先端技術が「受容」されるとき――再生医療研究の事例から
再生医学という「希望」/人のES細胞研究の開始まで/ES細胞研究に対する賛否/研究材料としての受精卵の歴史/「ヒト胚」という存在/胚への想い

第四章 再生医療の「倫理」問題
ES細胞の「倫理」/iPS細胞は倫理的か/「希望」の再考

第五章 生殖技術と女性の身体のあいだ
不妊であることの社会的意味/スティグマとしての不妊/「家」という圧力/「母性」という内圧/「女」という身体/「自然な身体」モデルと不妊/自己身体からの疎外/「不妊」の再解釈の試み

第六章 生殖補助医療から見る日本の家族観――AIDをめぐる政治・倫理・社会
日本における提供精子による人工授精をめぐる論争/規制を必要とした契機/AIDによって子どもをもつ理由/「出自を知る権利」の主張/ドナーのことを知りたい理由/「出自を知る権利」に関する議論/伝統的家族の強化か、新しい家族の創造か/「血のつながり」というイデオロギー/不妊への視線とその解消

第七章 卵子を提供する行為を考える――利他と利己
卵子提供をめぐる日本の状況/提供卵子によって子どもをもちたいと思う理由/提供の動機――利他か利己か/卵子とは何か/女性の連帯か分断か

第八章 生殖における女性の自己決定権――半世紀の議論の成熟と課題
自己決定権とは何か/人工妊娠中絶の自己決定権/「自己決定権」概念の拡散と疑義/「自己」と「自己身体」の関係/自己決定権のこれから

第九章 医師の論理と患者の論理――医療化した生殖と価値
痛みや不快感、リスクについての認識の差/不妊治療の限界についての認識/情報とコミュニケーション/選択しないことが得な文化/医師が作り出す欲望と欲望が作り出す医療

おわりに
「子どもが欲しい」と「不妊でありたくない」を見極める/「あきらめる」選択が困難な時代/未来の家族の設計図/「利他的行為」を要請する医療技術/どんな社会を築いていくのか


書誌
あとがき
用語解説
索引


著訳者略歴

柘植あづみ
つげ・あづみ

1960年生まれ。埼玉大学大学院理学研究科生体制御学博士前期課程修了、お茶の水女子大学大学院人間文化研究科博士後期課程満期退学。お茶の水女子大学より博士(学術)授与。現在、明治学院大学社会学部教授。 ...続きを読む »

※ここに掲載する略歴は本書刊行時のものです。

書評情報

上野千鶴子(社会学者)
<毎日新聞「読書日記」 2014年3月25日>
最相葉月(ノンフィクションライター)
<朝日新聞「ニュースの本棚」 2014年3月16日>
<中央公論 2014年4月>
<練馬区立男女共同参画センターえーる図書・資料室 2013(平成25)年8月>
林 真理(工学院大学教員 科学技術論・生命論)
<図書新聞 2013年1月19日(土)>
角田由紀子<「女性の安全と健康のための支援センター」ニュース 2012年秋>
八代嘉美(慶應大学特任准教授)
<朝日新聞 2012年12月16日(日)>
森岡正博(大阪府立大学教授)
<日本経済新聞 2012年11月4日(日)>
歌代幸子<週刊読書人 2012年11月3日>
竹田茂夫(法政大教授)
<東京新聞 2012年10月11日(木)>

関連リンク

この本の関連書

  • 自閉症連続体の時代
  • 流産の医学
  • 死ぬとはどのようなことか
  • 死すべき定め
  • 不健康は悪なのか
  • 精神疾患は脳の病気か?【新装版】
  • ナイチンゲール 神話と真実【新版】
自閉症連続体の時代 [著者] 立岩真也
流産の医学 [著者] ジョン・コーエン
[監修] 藤井知行
[訳者] 谷垣暁美
死ぬとはどのようなことか [著者] ジャン・ドメーニコ・ボラージオ
[訳者] 佐藤正樹
死すべき定め [著者] アトゥール・ガワンデ
[訳者] 原井宏明
不健康は悪なのか [編] ジョナサン・M・メツル
[編] アンナ・カークランド
[執筆] ヴィンカーン・アダムス
[執筆] ローレン・バーラント
[執筆] レナード・J・デイヴィス
[執筆] カール・エリオット
[執筆] S・ロッホラン・ジェイン
[執筆] ユンジュン・キム
[執筆] リチャード・クライン
[執筆] クリストファー・レーン
[執筆] キャスリーン・ルベスコ
[執筆] ジョセフ・マスコ
[執筆] ドロシー・ロバーツ
[執筆] トビン・シーバース
[執筆] ジョアン・B・ウォルフ
[訳者] 細澤仁
[訳者] 大塚紳一郎
[訳者] 増尾徳行
[訳者] 宮畑麻衣
精神疾患は脳の病気か?【新装版】 [著者] エリオット・ヴァレンスタイン
[監訳] 功刀浩
[訳者] 中塚公子
ナイチンゲール 神話と真実【新版】 [著者] ヒュー・スモール
[訳者] 田中京子
[解説] 川島みどり

「生殖技術」の画像:

生殖技術

「生殖技術」の書籍情報:

四六判 タテ188mm×ヨコ128mm/288頁
定価 3,456円(本体3,200円)
ISBN 978-4-622-07706-0 C0036
2012年9月10日発行

この本を購入する