みすず書房

J・M・シング『アラン島』の名訳で知られるアイルランド文学者が、ダブリンやスライゴーの街角でみつけた不思議な「モノ」たちから彼の国の歴史や文化をひもといてゆく。

たとえば西部メイヨー州・国立田舎暮らし博物館のミュージアムショップでみつけた、わら製のコーンヘッドのような、へんてこな物体。ここにはアイルランドとデンマークを繋ぐ、いにしえの物語がひそんでいた。はたまたダブリンでみつけた木彫りの「遠足馬車」、民衆絵画の島トーリー島の画家たちの絵、第二次世界大戦中、ベルファストに揚がった「防空気球」の絵葉書、ウィックロー州ハリウッド村の墓地で拾った「真鍮のボタン」等々。
十二個のモノたちがそれぞれに語りだす「モノ語り」とは?
W・B・イェイツ、ジェイムズ・ジョイスをはじめとする文学者、そしてアイルランドの独立運動を牽引した、熱い思いを抱く志士たちが多数登場!

本書は、第65回読売文学賞〈随筆・紀行賞部門〉を受賞しました。

目次

I
ふるさとはデンマーク
スズメバチと閉所熱——トーリー島物語〈1〉
絵語りの島——トーリー島物語〈2〉
遠足は馬車に乗って

II
シャムロックの溺れさせかた
歌のごほうび
ハープ氏の肖像
岬めぐり

III
真鍮のボタン
もの言わぬ気球たち
パーネル通り
メアリーは「できません!」と言った

モノ語りのはじまり——あとがきにかえて
本書に登場する主な人物

(イラストレーション 平野恵理子)

読売文学賞〈随筆・紀行賞部門〉受賞

第65回読売文学賞〈随筆・紀行賞部門〉受賞。選評(辻原登)に、「この本の構造そのものがイェイツの詩そのままに、枝を編んで粘土で固めた小屋のようなものだ。アイルランド・ケルトが触れられるもの、見られるもの、聴こえるもの、そして思考と夢想を存分に羽ばたかせてくれるモノとしてここにある」。

書評情報

読売新聞
2013年5月12日(日)
北海道新聞
2013年7月7日
沢渡 曜
望星2013年9月号
阿部公彦(東京大学文学部准教授)
KINOKUNIYA 書評空間2013年9月17日
信濃毎日新聞
2013年6月16日

関連リンク

「トピックス」

「トピックス」には、——「へんてこなわら細工」の写真、バラージ・バルーンの絵はがきの写真(ともに著者撮影)が紹介されています