「みすず書房」ページ内リンク

  1. 「メインメニュー」へ移動
  2. 「みすず書房の本の検索メニュー」へ移動
  3. 「本文」へ移動
  4. 「サイト利用ガイド」へ移動



漁業と震災

著者
濱田武士

東日本大震災で東北・常磐の漁業集落は壊滅的状態となった。
漁業にとってこの震災は「天災」、原発事故のような「人災」、そしてメディアや風評被害など情報が破壊的な力をもった「第二の人災」からなる複合災害であった。
政権内では「農地・漁港の集約化」をめざす「食糧基地構想」が浮上し、漁業権を民間会社に直接免許する「水産特区」も法制化された。宮城県は行政主導で漁港整備に選択と集中をかかげ、岩手県は全漁港の復旧を現場に託す。福島・茨城県の漁民は原発災害の対応に苦しんでいる。
高齢化、魚資源の減少、輸入水産物との競合。放射能の海洋汚染、TPP交渉。漁業は困難な時にある。かつて木材の輸入自由化で林業が衰退、山林が荒れたように、生産活動を行いつつ自然を守ってきた漁業集落が壊れれば、浜と海は荒れるだろう。
漁民が「自治・参加・責任」の精神で漁場を共同管理する近世からの伝統は、戦後は漁業協同組合(漁協)に受け継がれた。いま、「協同」の力がふたたび問われている。
多様な個性を備えた暮らす人、働く人の「人格」の復興がなければ地域の再生はありえない。成熟した社会としての安定もない。経済一辺倒の現代社会に「人間のなりわい」をとり戻すためにはどうしたらよいか、漁業経済学者が考えぬいた。

統計資料、図版多数。

(本書は、2013年度日本協同組合学会賞学術賞、漁業経済学会学会賞を受賞しました)


目次


漁法の説明

はじめに 天災と人災
1 認識の危機
2 「第二の人災」
3 本当に必要な「減災」とは?
4 漁業は漁民だけでは成り立たない
5 本書の構成

第一章 太平洋北海区の水産業と被災地
1 戦後からの漁業成長
2 200海里体制以後
3 デフレ不況にあえぐ産地
4 産地再生の兆しだったのか
5 そして東日本大震災

第二章 被災と被害
1 過去の震災からの復興
2 拠点漁港の津波被害
3 人への被害
4 物的損害
5 惨事のなかの槌音と構造再編、そして人災

第三章 漁港と漁村
1 水産公共事業の変遷
2 三陸の漁村・漁港都市
3 漁村と都市─罫線垂直構造からの脱却
4 コミュニティとしての漁村から復興を考える

第四章 復興方針と関連予算
1 国の方針──東日本大震災復興構想会議
2 岩手県の方針──漁協と市場を核に「なりわい」を再生
3 宮城県の方針──選択と集中
4 福島県の方針──展望が見えない
5 復興関連予算
6 対象的な岩手県と宮城県の漁業復興方針

第五章 食糧基地構想と水産復興特区
1 食糧基地構想の登場
2 漁港集約化の問題点
3 熟慮なき水産特区法の成立
4 漁業権と漁民の自治
5 適格性と紛争防止策をめぐる懸念
6 水産特区法制化後の動向──石巻市桃浦地区

第六章 水産業の再開状況
1 漁業・養殖業
2 経営・雇用問題
3 水産加工業
4 漁港の復旧と漁村集落のゆくえ
5 復旧格差はなぜ生じたのか

第七章 揺らぐ漁業協同組合
1 国際協同組合年と漁協
2 被災三県の漁協の体制
3 震災後の漁協の対応
4 協同の揺らぎ
5 漁協は復興の核となりうるか

第八章 メディア災害の構造
1 漁業権開放論
2 知事と漁協、そしてメディア
3 漁協自営定置網漁業とサケ資源をめぐる報道

第九章 放射能の海洋汚染と常磐の漁業
1 常磐の漁業の特性
2 原発事故と漁業
3 「えら呼吸の日々」──避難漁民の苦難と選択
4 試験操業
5 原発事故の社会災害がもたらす分断

第十章 地域漁業のゆくえ
1 縮小再編の加速
2 漁協の停滞と再建
3 震災前からの改革
4 異業種との連携
5 水産加工団地
6 集落の再生なしに漁業は再生しない

終章 日本の自然のなかの漁業
1 海が痩せてきている
2 漁獲枠の証券化と漁船割り当て制度
3 日本漁業と資源管理
4 漁業と科学者
5 《魚屋職人》の復権を
6 漁協とTPP
7 働く「人格」をとり戻す

あとがき


著訳者略歴

濱田武士
はまだ・たけし

1969年大阪府吹田市生まれ。99年北海道大学大学院水産学研究科博士後期課程修了。各地の漁村、漁協、卸売市場に赴きながら研究する。2002年東京水産大学助手をへて、現在、東京海洋大学准教授。 ...続きを読む »

※ここに掲載する略歴は本書刊行時のものです。

漁業経済学会学会賞受賞

「現場での取材を旺盛に行った著者の執念に裏打ちされて、漁業者・漁協関係者の息遣いが実感される記述(…)漁業経済学の枠を超えて協同組合論、地域経済論、行政学等に対しても少なくない問題提起(…)重要な大震災関連文献として後世に残る著作」(授賞理由より)。本書は2013年漁業経済学会学会賞を受賞しました。

日本協同組合学会学術賞受賞

「東日本大震災からの漁業の復旧という当面の課題にとどまらず、当地の漁業・漁村の歴史やそれぞれの地域特性、漁協のあり方など、協同組合理論の発展のために必要な論点を積極的に展開」「現代日本における漁業の状況をふまえ、漁協のあり方などを総合的に論じた論文はあまりなく、また東日本大震災からの漁業の復興を漁協の事業・運動から論じた視点は他の協同組合にとっても示唆となる。 ...続きを読む »

書評情報

萱野稔人(津田塾大学准教授)
<2013年4月7日(日):朝日新聞>
竹田茂夫(法政大教授)
<2013年5月16日(木):東京新聞>
上野敏彦(共同通信編集委員)
<2013年5月5日(日):(共同通信配信)>
上野敏彦(共同通信編集委員)
<2013年5月5日:神奈川新聞、沖縄タイムス(ほか共同通信配信)>
開沼博(社会学者・福島大特任研究員)
<2013年6月2日(日):読売新聞>
川島秀一(東北大教授・海洋民俗学)
<2013年5月12日(日):東京新聞>

関連リンク

この本の関連書


「漁業と震災」の画像:

漁業と震災

「漁業と震災」の書籍情報:

四六判 タテ188mm×ヨコ128mm/320頁
定価 3,240円(本体3,000円)
ISBN 978-4-622-07752-7 C1033
2013年3月8日発行

この本を購入する