みすず書房

消えた国 追われた人々

東プロシアの旅

判型 四六変型
頁数 288頁
定価 3,080円 (本体:2,800円)
ISBN 978-4-622-07763-3
Cコード C0095
発行日 2013年5月9日
備考 現在品切
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消えた国 追われた人々

「日本は日本人の国と思い定めて、ごく身近なマイノリティであるアイヌ人すら忘れがちな国民性にとって、多民族・多言語の国や土地は想像が難しい。だが、自称〈単一民族〉国家こそ、地球上の例外であって、それを最良と考えるほうが異常なのだ。私はおぼつかない東プロシアという消えた〈国〉のなかに、すこぶる現代的な〈国の選別〉のヒナ型を見た。生まれた国と育った国、いまや、人が国を選び、あるいは捨てる。国そのものが人によって選びとられ、また捨てられる。第二次世界大戦末期に、力ずくで捨てさせられたとき、千二百万人をこえるドイツ〈難民〉が生まれた。それははからずも、いち早く二十一世紀を先取りしていた」(あとがき)

東プロシアという聞きなれない国はいつ成立し、またいつ、どのようにして消えてしまったのか? 首都はケーニヒスベルク、古くは中世に遡る歴史をもち、多民族が共存し、豊かな文化を維持してきた。コペルニクスが星を見あげ、カントが『純粋理性批判』を書き、ホフマンが酒場に入り浸った国。しかしこの国も戦禍を免れることはできなかった。わけてもヒトラーやスターリン、第二次世界大戦はこの国土を一変させた。著者はギュンター・グラスの翻訳を機に、今はなき国の歴史をもとめて三度の旅を重ね、闇に埋もれた過去の諸相と現在を探ってゆく。時の熟成のなかで完成された紀行記の名品。

目次

はじめに

グストロフ号出港す
水の国
城のある町にて
マレンカの町
狼の巣
ヒトラー暗殺未遂事件
水陸船第一号
カントの町
海の道
カントの墓
琥珀の木箱
タラウの娘
メーメルのほとりで
風のホテル
黄金の門
死せる魂

あとがき

写真|池内郁

書評情報

川本三郎(評論家)
日本経済新聞2013年6月9日(日)
池内紀(ドイツ文学者・エッセイスト)
日本経済新聞「こころの玉手箱」2016年4月1日(金)夕刊

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